By 小堺 高志 2009年 12月31日
早いもので、またクリスマスの季節がやってきた。
先々週の週末にマンモスに行くつもりであったが嵐がくるというのでキャンセルしてしまった。その週末180cmもの雪が積もり、マンモスも全面オープンした。斉藤さんが一人で滑りに行ったという噂を確かめるべくメールで問い合わせると、ながながと大雪の話を書いてくれて、最後に「私もヤッホーと叫びながら新雪に突入、そこで目が覚めました。夢のまた夢。人生も未来も曖昧なものです。南無阿弥陀仏、南無阿弥仏」
「仏の齋藤さん」にすっかり騙されてしまったが、マンモスはその後も低温が続き、さらに昨日30cmの新雪が降り、最高の雪質がスキーヤーを待っているはずである。
クリスマス休暇の4日間は天候も良さそうである。
楽しいクリスマスになりそうであるが、原ちゃんが腰痛のドクターストップでスキーにしばらく行けないのが残念である。菊池さんは24日は午前中仕事で午後にエルセントロを出て夜中に着く予定である。斉藤(太い)さんは24日の早朝に着き、ランチタイムにマッコイで会うことになっている。嘉藤さんは25日からの合流である。
今回は連休前の道路の混雑を避け、23日の遅い時間に佐野さんと出発することにした。9時にトーレンスの家を出て、すでに混雑の終えたフリーウエーを走り、30分で佐野さんのところに着く。そこから9時40分ごろ出発して、1時間半でモハベに着いてしまった。マンモス到着は真夜中の2時20分であった。
先週からシャモニーのコンドから歩いていけるキャニオンロッジが開いている。朝9時に佐野さんが2週間前からチューンアップのためにロビンのスキーショップに預けたままにしてあるスキーを取りにいく。無風状態で快晴。雪質は踏みつけるとキュウキュウと鳴く良い雪だ。佐野さんの足もかなり良いそうである。
1本目、5番を滑り出すと、気持ちよくスキーが雪面をとらえる。佐野さんの事を忘れてそのままノンストップで下のリフト乗り場まで一気に下りてしまった。リフトラインで止まって振り返ったら佐野さんもすぐ後ろに付いてきていた。駄目だよ、無理しちゃ。でも「雪はいいねー」、とうなずき合う。レースコースが良い感じである。今度は佐野さんを待って並んで滑り降りる。「気持ちいい!」佐野さんはロビンのチューンナップにえらく御満悦である。何といってもロビンは元ナショナルチームのチューンアップをしていた最高の技術を持っている。
快晴で最高のコンデション、佐野さんがほぼカムバック
気が付けばすでに12時になろうとしている。齋藤さんとランチタイムに中腹にあるマッコイステーションで会うことになっている。しかしブロードウェイの横に短いが手付かずの新雪が残っているとこが見える。堪らず佐野さんに先にマッコイに行ってもらい、私はもう一本滑ることにする。しかし佐野さんと別れて実際に行ってみたら、そこは赤いロープが張られ、進入禁止の場所であった。無理に滑ってチケットを貰うのも馬鹿らしい、でも滑りたい。どうしようかと考えていると、ちょうど4台のキャットが雪面を均しながら上がってくる。私は目標をそのグルームが終わったばかりの斜面に変更した。4台目が目の前を過ぎると同時にその斜面にはいる。まさに最適に踏み固められ、こなされて粉雪状に平らにグルームされた雪面である。最高に気持ちよく滑って、振り返るともう私のシュプールはもう他のスキーヤーに消されていた。
マッコイステーションに入ると、佐野さんは見つかったが、斉藤さんが見当たらない。軽い食事をして、ビールを一杯。
新雪が残ると見えたところは入れなかった、でもグルームしたての雪を満悦
ウエストボールに凸凹が出来ている。まだ大きくない滑りやすいバンプである。同じリフトから下り、佐野さんはグルームされたフェースの表面を下りるというので私だけウエストボールの上に立つ。久しぶりのモーグルであるが、滑り出しの斜面は楽勝である。凸凹に翻弄されることなく、凸凹を支配する感じで滑られて気分は最高。しかし、後半は体力的にきつくなってきて立ち止まり、時間をかけて呼吸を整えなければならない。モーグルは体力を使う。
ミルカフェで休んでいるとマンモスのキャラクターであるウイリーとサンタクロースが滑ってきた。
スパンプアレーのミルカフェでサンタとウイリーに会う
裏側の25番を通って、回り込みながらキャニオンロッジへ戻ることにする。出だしの上部はソリトウドという広い大斜面であるが、まもなくイーグルリフトの方へ左へ左へと進路を取らなければキャオンロッジに抜けられない。佐野さんの後を付いて林の中を行くと目の前が垣根で行き止りに出てしまった。この垣根は昨シーズンまでのものをさらに下部に継ぎ足して長くしたものであるが、邪魔である。垣根沿いに狭い場所を下り、キャニオンロッジへと抜けていく。
佐野さんの足も無理してはいけないし、今日は4連休の初日と言うこともあって早目にあがることにした。午後2時前であるが今日最後の滑りには、ほぼお決まりのレッドウイングを選ぶ。ここはマンモスでは初歩的なモーグルの瘤斜面で攻撃的にスピードに乗って滑っていける。この位の斜面が面白く締めの斜面としては適当である。しかしモーグルに限らず、スキーはより厳しい斜面を滑ることにより上達していく。それにより克服できなかった斜面をいつの日にか、余裕を持って滑られるようになるのである。
今日は誰も携帯を持たないで滑っていたので、宿のシャモニーに戻って始めて齋藤さんと連絡がついた。我々がマッコイで昼休みに入る10分前まで待ったそうだが、行き違いになったようだ。後で夕飯に来るように伝える。
夕方シャモニーに来た齋藤さん、今日は27本滑ったと言う。ただし、どうやって一本、二本と数えているのかは疑問である。(ともかくリフトに何回乗ったかが本数です。とのこと)
前回来た時にテレビのケーブルチャンネルが入らないと佐野さんが方々に電話して文句を言っていた。今回その原因が分かった。なんの事はない過去10年間に渡りお金を払ってなかったそうである。何だ、それは?でも今までの分は不問と言うことで今月から支払いをはじめたのでケーブルをみられるようになった。
齋藤さんが持ってきた燻製の肉を食べながらホットワインを飲む。スイスでスキーの後で飲んだグーパインという蜂蜜を入れて温めたワインを真似て作ったもので出ある。今日の夕飯は豚肉とキムチの炒め物と鶏肉のカレー風味の酢豚風料理である。結構手間のかかった料理である。それなのにまたスモークをしただけの齋藤さんの鳥、豚、七面鳥の燻製肉が人気なのが気に食わないのだ。
先週日本から帰ったばかりだという菊池さんが夜10時ごろに到着する。
ずっとユナイテド航空を使っていたが、今回始めてJALを使ったらソフトオンデマンドで映画が観られて、機内食も良かったと言う。私はここ数年すっとANAである。どちらのサービスが良いかと話していると、そこに斉藤さんが割り込む。何でここに割り込むのかと一瞬思ったが、そういえば齋藤さんは某大手旅行会社の責任者であった。もう少しオーラを出して割り込んで欲しい。ハハハ。斉藤さん、何時も話題の提供有難うございます。
今日は3人で夕飯、菊池さんの到着を待つ
クリスマスの朝、7時半に起きて朝食の用意をして8時半に二人を起す。昨日と同様に快晴で無風。水筒にワイン一本分を入れ、ビールを何本かもって出かける。
私と佐野さんはスキー場のロッカーに昨日からスキー用具を入れてあり、手ぶらで歩いて5分くらいのキャニオンロッジに向かう。軽い上がり坂である。菊池さんはスキー道具を持っているのにさすが山男で歩くスピードが早い。我々の先をドンドン行く。「菊池さんは我々と歩くのにスキーを持ったくらいのハンデーでは駄目だね。もう20キロくらい石のはいったリュックでも背負わせないと」と佐野さんと勝手なことを良いながら後を追う。
昨日と同じ5番から滑り出す。10時には齋藤さんとマッコイステーションで会う約束をしている。先を急がなければならないが、あまり急がず10時15分にマッコイに行くと今日は斉藤さん入り口の一番目立つところで待っていた。少し休んで4人でゴンドラで山頂に向かう。山頂は下からは凄く良さそうにみえたが、意外と風があった。前回全体が見えていた頂上の10メートルほどの案内ポールがすでに半分以上埋まっている。
山頂から降りるコーニースは滑りやすかった。その後ブロードウエーの周辺を何本か滑るが、佐野さんの足首も良いようで、ずっと皆と一緒に滑れている。
菊池さん、参加、マッコイにて休憩
昼休み、マッコイの目立たない場所でクリスマスパーテーである。ビールとワイン。齋藤さんの自家製スモーク肉入りサンドイッチ。菊池さんの持ってきたビーフジャッキ。
隣の人が驚いている。それはそうだ、どう見てもグレープジュースで乾杯にはみえない。ビールは佐野さん、菊池さんのリュック、私のポケットからいくらでも出てくる。乾杯!
半分埋まった山頂の案内柱と山頂からコニースの入り口へ
齋藤さんがサンドイッチを作ってくれる。午後からゴンドラで山頂へ
午後から気持ちよくなってデービスランを滑るためゴンドラで上にあがる。急勾配であるが雪質は良い。今日も何処を滑っても最高に近いコンデションである。そしてクリスマス連休なのに意外と混んでいなくて何処もリフトラインが短い。やはりマンモスも不況の影響が出ているとロビンが言っていたのを実感する。
ゴンドラを下りてデービスランの滑り口に向かう。上からの斜面と途中に立ち止まる佐野さん、実際はかなりの急斜面
気持ちよく酔っても、気持ちよく滑られる訳ではない。やはり高度の高いところでアルコールがはいると運動はきつくなり酔いも回ってくる。適当に休みながらいくが、ヨーロッパでもスキー場ではアルコール類は何処にでも売っている。
一度マッコイで休憩に入る。今回はあまり人のいないトイレの裏側である。
齋藤さんも一緒に少しずつキャニオンロッジの方向に移動する。アッパードライクリーク、アクトと途中でモーグルを滑りながらキャニオンロッジに着き、何本か8番リフトの下のレッドウイングの斜面を滑る。やっぱりコントロールできるパンプでのモーグルは面白いが、どんな斜面でも余裕をもって滑られるようになるには常に挑戦し技術を磨くしかない。
アッパードライクリークは狭いシュートで不揃いな瘤がある難所
今回のクリスマスの夕飯は鍋物である。ちょっと毛色の違ったイタリア風トマト鍋を作るる。白身の魚、エビ、牡蠣を小麦粉を付けて油で火を通し、いろんな野菜を入れたブイヨンベースの鍋に混ぜる。トマトをいっぱい入れてトマトケチャップと塩で味を調える。
食後ワインを飲みながら菊池さんの持ってきたDVDの映画を観ながらクリスマスの夜は静かに更けていく。
トマト鍋
3日目は曇り空。外に出るとめちゃくちゃ寒い。キャニオンロッジからリフトに乗って、ローラコーストに下りる。力を抜いて気持ちよく滑られる初心者コースである。そこでリフトに乗ろうとしたら佐野さんがシーズンチケットを忘れてきたことに気づく。ともかく取りに戻ると言うのでマッコイステーションで後で会うことにして菊池さんと裏側にある25番にいく。最初は気持ちよく滑れたが、後半は硬くて長い凸凹斜面で段々と太股が痛くなってくる。なんせ3日目であるから疲労もある上にこの斜面は昨日よりかなり雪質が悪くなっている。菊池さんと「厳しかったね」と言葉を交わし、リフトに乗り5番に戻る。佐野さんが居ないので5番もスタンプアレーのコースもノンストップである。
やっと合流した佐野さんと、昼前にマッコイに行くと斉藤さんと今朝着いたばかりの嘉藤さんがすでに席を取っていた。齋藤さんのサンドイッチと私達の持っていったお稲荷さんを交換する。そして今日も1本分のワインとビールを持ってきている。
齋藤さんは朝8時に嘉藤さんと元カナダのナショナルチームのコーチであったラリーと会い、山頂からボトムまでのノンストップ4本という滑りにつき合わされ限界。ラリーは前シーズン私達をマンモスの裏の天然のトンネル潜りに案内してくれたスキーヤーである。63歳であるが、その後も嘉藤さんを昼まで連れ回したという怪物である。山頂からノンストップは出来るかもしれないがとても彼らのスピードにはとても付いていけない。齋藤さん4本付いていけたとはたいしたものである。
先月、嘉藤さんは去年に続き、またオーストリアに一週間スキーに行ってきたそうだ。向うのインストラクターと滑る かなり厳しい「合宿」であったと言う。
午後から5人で滑るとかなり目立つ団体になる。さすがに先頭の嘉藤さんは上手い。私もかなりニュースキーのストックリー・ローター72に慣れてきた。しかし体力的にいけたのは午前中だけである、午後からは足がついてこない。佐野さん今日はほとんど私と変わらないくらい滑っていた。いつも踝の痛みに泣かされている佐野さんが滑れると嬉しい。
今日は皆さん予定があるそうで夕飯は我々3人だけである。
外はかなり寒い、今日もスキー場でワインパーティー
クリスマス休暇最後の早朝、駐車場の車が1cmほどの雪化粧をしている。まだ暗い空からはぱらぱらと雪が舞っている。
出掛けに佐野さんが「皆、シーズンパス持った?」と聞く。昨日忘れたのは貴方でしょう。他人の心配より自分の心配。キャニオンロッジ エクスプレスのリフトに乗ってすぐ、佐野さんが言う。「ゴーグル忘れちゃった」だから言ったでしょう。
そのままリフトの下を滑って、アクトのモーグル斜面に入る。朝のうち足の疲れていないうちにという思惑ははずれ、まだ足が起きていなかった。22番リフトに乗る。このリフトの下はマンモスでも屈指の急斜面の林間コースになっている。10cmくらい積もったコースを何人かにスキーヤー、スノーボーダが降りてくる。まだ障害物が出ているのでこの積雪では私は行かない。
22番リフト上から見た景色
5番に斜面に出ると今朝降った雪で昨日よりコンデションが良くなっている。グルームされた斜面は新雪のコンデションである。良い!もう一本。佐野さんは先にマッコイへ向かう。
今度は右側のグルームしてない斜面を下りる。ここは上部はいつも風が強いため雪の付がわるいが、後半は良い感じであるが、その表面の雪の下には硬い凸凹が隠れている。途中でリフト上の嘉藤さんが私を見つけ、「どうですかと?」声をかけてきたので「上は良くありませんよ」と答え、後半の谷斜面を滑っていると今度は齋藤さんリフト上から、「もう、足に来てますよ」と言われる。分かってますって。でも吹き溜まりでは粉雪が足元で舞う。リフトの上から嘉藤さんが飛ばして下りてくるのが見える。途中で彼らが追いつくのを待ち、スタンプアレーに向かう。
22番リフトからの眺め
22番を下りて5番リフトの上部を望む、菊地さんと嘉藤さん。
リフトラインでラリーと会い、一緒にリフトに乗る。一本嘉藤さんにビデオを撮ってもらいながら滑ると嘉藤さんはラリーを追っていく。私は残った齋藤さんと一緒に滑り、さらにマンボの斜面でビデオを撮ってもらう。視界が良くなったり悪くなったりしている。
もう我々は上がり時間である。最後に齋藤さんともう一度マンボを下りる。林の中にあり風がなく今日の人気コースである。スキーヤーを縫うように避けながらターンをしていく。齋藤さんが飛ばしていくので私も大回りのターンで追う。
一度上がって10時40分ごろマッコイに佐野さん、菊池さんを探しに行くが、見当たらない。もう戻らなければならない時間である。齋藤さんと別れてキャニオンロッジに向かう。一気下りであるが、何時ものアクトの一つ手前の斜面をおりてみる。そのまま止まらす斜面にはいるとアクトより少し小さ目の瘤が出来ていた。とちゅうに初心者が3人ほどいるのを避けながら速いスピードで瘤斜面に入ってしまったが、そのまま進む。この大きさの瘤ならコントロールできる。スピードに負けないようにスキーの前面で瘤を押すように小さ目の瘤を一つずつ乗り越えていく。斜面を滑りおり、「今回は、なかなか決まったな」と思った時、下で見ていたスキーヤーから「ナイス!」と声をかけてもらった。気分の良い締めである。そのまま下のキャニオンロッジまで止まらずに滑り降りる。ちょうど陽が射してきた。いつの間にかクリスマス休暇のスキー客はニューイヤーのスキー客になりつつあるようで、リフトラインが長くなっている。
キャニオンロッジ前に行くと椅子にかけた、佐野さん、菊池さんが待っていてくれた。
ビデオから取った映像であるがスキー中の私。
雪山に囲まれた 帰りの395号線ビショップ付近、右端の写真がアラスカ以外で北米一番の標高を持つマウントウイットニー
今年は12月に入って仕事や、いろんな事で思うように行かないことが続いていた。自分のコントロールできないところで物事が進むのはとてもフラストレーションであるが、後一週間で今年も終わりである。新年にあたり、すべてがリセットされ、季節が変わるように、物事が良い方向に流れ出すことを祈る。
人生、ままならぬこともある。それでもいまだにモーグルが上手くなることを願うように夢を追い続ける。すべての望みや夢が叶う訳ではないのは判っている。
現実は現実として受け入れつつも、人生の後半ではあるが、夢を夢見て健康に今年も暮らして行きたい。
人生これ不可解、南無妙法蓮華経。あっ、齋藤さんとは宗派が違いましたかね?
ハッピーニューイヤー!