小堺 高志 2011年11月30日
今年は11月の第二週のマンモスのオープニングに行かなかったので初すべりは例年より遅いサンクスギビングの4連休となった。
11月23日、午後6時15分に斉藤さんが拙宅に来てくれて、一緒に出かけようと運転席に座ったら、私の財布が無いことに気づく。
幸い財布は机の上にあり一安心であるが、往復で40分、出だしからすっかり予定が狂ってしまった。
会社から佐野さんのところまでは高速道路は斯くあるべきというくらい交通渋滞はなく空いている。おそらく連休に出かける人の今日のピークは過ぎているようである。
予定より40分遅れで7時40分に佐野さんのところに着くとまずは私のせいで出発が遅れたことを詫びる。久しぶりに会う原ちゃんがいる。今回は原ちゃんが張り切って早くから「連休のマンモスの予定は?」と私に連絡してきていたが、肝心の佐野さんが日本から前日まで戻らなかったのでコンドが確保出来ているかの最後の確認が取れたのは前日の午後であった。
出発してすぐ、今回は珍しくタイレストランでタイ料理を食べて行ことになった。甘辛いタイ料理は日本人の口に合う。
夜中の1時40分ごろにマンモスに到着。駐車場は空いている。
まずは乾杯。
佐野さんは菊池さんの結婚式出席のため5年ぶりの日本帰国であった。
どんな話が飛び出すか期待しているが、何にせ佐野さん、最近公表してはいけないと言うNGが多いのである。
書ける範囲で書けば、交番のお巡りさんに結婚式ののし袋の表書きを書かせたのは佐野さんくらいでしょう。まー、“さつ”がらみの事だからと呆れながら感想を言う我々であった。しかし日本のおまわりさんの親切さは世界に類が無い。
11月24日、サンクスギビングの日、10時過ぎの遅い出発でミルカフェのさらに手前の駐車場に車を止めゲレンデまでの150mほどを歩かなければならない。腰の痛い原ちゃんにとってこの距離が辛そうである。原ちゃんは今回キャニオンロッジが開いているとおもって張り切っていたらしい。この歩きですでに半分やる気を喪失している。
2週間まえにオープンしたマンモスはまだメインロッジ周辺だけのオープンであるがこの連休に向けてスタンプアレーと山頂からのコーニスがオープンしていた。
やっとリフトラインにたどり着いた原ちゃんは3番のフェースリフトで裏フェースを一本滑ると、もうマッコイステーションで休憩である。でも、ここまで付き合ってくれた事が嬉しい。トイレに行くという佐野さんも置いて、斉藤さんとブロードウエーに降りてみる。
半年振りの原ちゃんの参加は嬉しい。かなり辛そう。でもゴルフをしていたと言う情報も。
先週末に30cmほど積雪があり、人口雪も作られているが、雪質は硬く、決してよくは無い。しかし初すべりの時期はこんなものであろう。暖冬でまだ開いていないスキー場が多い中、例年通りのスケジュールで11月の第2週にオープンしたのだから立派である。斉藤さんと12時まで足慣らしに滑り続け、マッコイステーションで休憩の為二人に合流する。ビールを飲み始めると、斉藤さんの顔見知りの西脇さんが声をかけてきた。私も去年3番リフトの降り場でお会いしているそうだが、その時は確か6名ほど居たので覚えていない。宿をマンモスの45分ほど手前のビショップの街に取った彼らは、今夜さらに3名仲間が加わるのだそうだ。
昨シーズンまではリフト乗り場でシーズンパスをスキャナーで毎回読んでいたのが今回からゲート形式になり、いちいちチケットやパスを出さなくともゲートを通ると自動的に読み取ってバーが開いて通れるようになる。
そこで佐野さん、毎回引っかかる。止められてシーズンパスを出すように言われる。財布の奥深くにしまっているのが原因といわれ、財布から出して、ポケットの一番外側に入れておきなさいと言われている。まだシーズンはじめで新しいシステムになれなくてゲートで足止めをくらう人が多いが、皆が慣れてくればこの新システムは威力を発し、スムースに流れ出すのかと思う。
佐野さんは絶対不慣れな日本の鉄道の自動改札口でも止められていたと思うのである。
新しく出来たゲートシステム。まだ慣れない人が多い。佐野さんも引っかかりました。
西脇さんと来ている大貫さんと女性のスノーボーダー、一緒に数本滑って、西脇さん、斉藤さんと私の3人でゴンドラに乗り山頂にいってみることにする。山頂からの今唯一の下りコースであるコーニスのコンデションは良いはずがない。
ゴンドラ降り場から久しぶりの山頂にでると、いつもは埋まって2−3段しか出ていない階段が23段もある。長い階段を下りて雪面に立つと、咋シーズン腰掛けられるほどに埋まっていた山頂のポールが高く聳え立っている。
7月4日以来の山頂。長い階段が出ている。そして久しぶりの原ちゃんとゲレンデにてじゃれあう。
コーニスは予想どおりの凸凹で荒れ斜面。さらに凸凹の斜面のそこここに顔をだす岩や石を避けながら滑らなければならない。
2時半にミルカフェで佐野さん、原ちゃんと待ち合わせをしていたが、斉藤さんもお尻の筋肉が痛いとかで1時間早くあがり、車をスタンプアレーのリフト乗り場のすぐ前に動かして原ちゃんに電話で知らせる。
原ちゃん、私、佐野さん
斉藤さん、マッコイにて酒盛り。 1月1日に帰国命令を出されている西脇さん。
やがて降りてきた佐野さん、原ちゃんと引き上げる。
途中で佐野さんが「今回日本でいっぱいユニクロの下着を買ってきたのに忘れて来たのでパンツの着替えが無い」というので、ダウンタウンに佐野さんのパンツを買いに行く。マーケットのボンズに行って、駐車場で待つて居ると、戻って来た佐野さん曰く「下着は売ってなかったよ。野菜売り場でどこに下着を売ってるかと聞いたら周りに大勢人が居るのに『この人下着を買いたいんだって、マンモスではどこで買えるかしら?』と大声で周りの人に聞いてくれるから恥ずかしかった」そうである。野菜売り場で聞いたのはまずかった。せめて雑貨売り場で聞いたらよかった。
スポーツショップでは売っているのを知っているが、こだわりの佐野さんはトランクスでないと嫌なのだそうだ。「だったら海パンがあるでしょう」と私。
おっとっと、ここから先は佐野さんのNG、書いてはいけないらしい。いつも期待を裏切らない佐野さんであるだけに残念であるが、それからどうしたかは皆さんには想像していただくしかないのである。
ジャグジーに入り、今夜の夕食は私の当番である。鶏肉の梅干と味噌の煮物と魚の炒め物である。
昨夜は遅く寝たので今日はワインを飲んで早々と寝てしまった。
夕食と、寝る子は育つの図、育ちすぎて董がたってしまった斉藤、原の両氏。
10時間以上寝て眼覚めたのは7時。
今日は佐野さん、原ちゃんは遅く出ると言うので佐野さんにスキー場まで送って落としてもらう。トイレに寄って出遅れた私は斉藤さんを追う。2番リフトの中腹でノンストップで滑り降りてくる斉藤さんが見える。追いかける私、逃げる斉藤さん。いや、斉藤さんも私を追いかけているつもりでしょうから、どちらが追いかけているのか判らないが二人の距離は変わらない。5本ほど滑って、スタンピーのリフトラインが込んできたので合流。この朝のうちの1時間は休み無くかなり滑れた。
西脇さん達と6名でゴンドラに乗り一緒に山頂に行く。
ゴンドラの中、西脇さんはすでに辞令が出ていて来年の1月1日に赴任を終え帰国すると言う。斉藤さんの帰国の話になる。「来年の5月位から2ミリオンの家を売りに出して、それからですから、すぐには売れないと思いますよ」と斉藤さん。ちょっとまて、真剣に聞いている人がいる。ここは私の出番を斉藤さんが待っている。すかさず私が割って入る。「すみません、今日始めての方もいるので言っておきますが、この人の話はそのまま聞かないでください。2ミリオンの家に住んでいる人には見えませんでしょう?」そこで斉藤さん、自分でも告白「すみません。所詮嘘で固めた人生ですから」と、そこで皆さん爆笑。この人にはNGは無しである。
コーニスは夜の間にグルームされて凸凹が削られ、昨日よりかなり滑り易くなっていた。
2時過ぎに原ちゃんが迎えに来てくれるはずである。2時12分にスタンピーの駐車場に降りると、なんと佐野さんと原ちゃんがお揃いでスキーを持って待っていた。なんでも3本滑ったとか。絶対にフットボールを観てコンドで一日を過ごしていると思っていたので驚きである。しかし遅く来たので車はかなり遠くの路上に駐車し、戻るのにシャトルバスを使わなければならない。
今日は雲ひとつ無い晴天、山頂にて記念撮影。
斉藤さんが今日は料理当番である。
ジャグジーから戻ると先に上がった斉藤さんが料理をしていた。両手で料理中のポテトサラダが入った入れ物を持っている。
あ、斉藤さん くしゃみが出そう。当然くしゃみをするために食料を離してするかと思ったら、両手を顔面に引き寄せて手に持った食材10cmくらいの距離でくしゃみをする斉藤さん。私の位置からは明らかにそう見えたが、「仏の斉藤さん」の実態を知る私はこのくらいでは驚かない。
今日のメインは昨日から斉藤さんが作っていたカレーである。玉ねぎを時間をかけて狐色になるまで炒め、さらに肉、野菜も別々に炒めて下ごしらえをしてから煮込んだ凝ったカレーである。サイドは例のくしゃみの調味料入りポテトサラダである。
ワインもビールも夕方には無くなって、今日の夕食はアルコールなしの夕食である。
カレーもポテトサラダも美味しゅうございました。やっぱりあのスパイスが効いたのか?
カレッジフットボールの時期である今は佐野さん、原ちゃんは食後もテレビの前から離れない。フットボールにはほとんど興味ない私はエッセイを書いて過ごす。
土曜日、キャニオンロッジが開いていないのでもう滑らないと言う原ちゃんと、雪質が悪いから滑らないと言う佐野さんを置いて斉藤さんとゲレンデに向かう。昨日よりさらに早い8時20分にスタンピーの駐車場に着くとかろうじて駐車場内に車を止めることが出来た。もう1分遅く着いていたら路上駐車である。
リフトは8時半から動き始める。
今日も朝の2時間はスタンピーアレーをほぼノンストップで滑り続ける。そしてさらに斉藤さんとビデオの取り合い、じゃなく撮り合いをする。
昼休みの45分くらいを除き、午後2時まで滑り通しであった。
帰りに街に出て、ロビンのお店に寄りスキーをチューンナップに出す。岩や石でスキーの滑走面はかなり傷ついている。
そしてビール、ワインが切れて待っているであろう二人のために飲み物の買出しをしてコンドに戻る。
朝、8時半にはもう駐車場はいっぱい。雪山を見ながらのビールがうまい。
ウエストボールの荒れ斜面をいく勇士、斉藤さん
部屋に入るとすでに掃除が済んでいて、二人はこれから帰ろうと言う。今回もいつものとおり、日曜の午後にまで滞在予定で食事のメニューを考え、用意もして来ている。今朝の段階で予定を早めて明日、日曜の朝に出ると言う妥協案には合意をしたが、今日の夕方出ると言う話は同意した覚えはないし、帰ったとたんに、あまりにも強引過ぎる。二人の言う予定を早めたい理由は来る前から判っていたことでもあり、急に帰らなければならないMUSTとは思えない。
私とて帰りたいという人を無理に引き止めほど鬼ではないが、相談も無くいきなり言うのはルール違反である。全員納得した予定のもとで一台の車で来た以上、その予定を変更するには、多数決ではなく、それなりの説得力のある物でなければならない、と、一応、言うべきことは言わせてもらい、食事の後で帰路に着くことになった。
二人とも私の言ってる事が理にかなっていることは判っているはずである。こういう時、佐野さんに私ほど強く物を言う人は居ないと思うが、私はおかしい事はおかしいと言わせてもらう。これも30数年の長い付き合いと互いの信頼があるから言えることである。言うだけ言ったら納得しないまでもすっきりしてワインを飲みながら料理を済ませ、飲んでいない原ちゃんに運転を任せ帰路に就く。
帰り道、斉藤さんが日本昔話『舌切りすずめ』を秋田弁で熱演して車内の雰囲気を和ませてくれる。舌きりすずめの話の中で虫けらや蛇の入った大きなつづらを持たせたのは、実はすずめではなく鷺であった。これはサギだと言ったので詐欺と言われるようになったという斉藤さんのオリジナルの落ちが付いている。
そして、なんだかんだ言っても私にとり誰よりも長い付き合いの佐野さんは互いに最も気の置けないアメリカでの兄弟的な存在である。それだけに甘えて遠慮なく言いたい事を言ってしまうことも多々あるのである。
今回のスキー三昧のエッセイが開始いらい99回目である。次回のスキーがスキー三昧100編目となる。
いつまで続くか判らないが、大好きな、この仲間達との時間を楽しく過ごしたい。
ただそれだけである。
完