小堺 高志 2011年4月8日
まもなく春を迎えようという3月、しばらくスキーに行っていない間に日本の東北地方を襲う大地震が発生した。
この大災害の中で被災者の人たちが秩序ある対応で助け合っている姿に世界中の人々が感動を受け、支援の輪を広げてくれている。しかし人は希望があるから明日を目指して今日を生きれる。その希望を適切、明確に示すべき政府の対応の悪さ、指導力の無さが指摘され、今だに被災者はその希望や進むべき方向を見出せずにいる。
この国家の危機に、すぐに切れる、すぐに怒鳴るというイラ菅が首相なのは日本の不幸である。
初期段階で適切な手段を取れなかった指導力のない菅首相の政治責任と、経営第一で最初から思い切った対策を打てなかった東京電力の企業責任は責められるべきである。
地震から3週間、連日地震のニュースより福島第一原発のニュースが人々の関心事になってきている。この放射能漏れはいまだに続いており、何時収束できるのかまったくわからない。冷却を続けなければならない大前提があり、冷却水をかけ続ければ汚染された冷却水が流れ出す。ジレンマの中で未だに解決策はみえていない。今後何ヶ月、何年とこの状態が続くことが懸念されている。
ニュースを見るたびに暗い気持ちになり、やりきれない。スキーの気分ではないが、先月3月は一度もマンモスに行ってなかったので、こんな時こそ気分転換が必要なのかとマンモスに行く事になった。マンモス行きは先週末に一度大雪で取りやめて今週に延期していた。今週末は天候がよさそうであると聞いていたが金曜の朝になり週末の予報は雨と雪に変わった。
今回は久しぶりに斉藤(健)さんも参加してくれると言うから賑やかに暗い世相を覆していただこう。
出発の前からメールでメンバーとやり時をしている。佐野さんが金曜は早い時間に出たいと言うので私が佐野さんと先に出て、原ちゃんと斉藤さんが後で出ることになった。菊池さんはエルセントロから来るので原、斉藤組と同じくらいの到着時間か?
原ちゃんが「車が3台になるが駐車許可書は2枚で大丈夫ですか?」と心配するので、「斉藤さんが車をビレッジに停めて歩いてくれば良い」という意見もでている。まー、行けば何とかなるでしょう。
食事の用意は私がするが斉藤さんには「主食にもなるサラダをお願いします}と伝えると「ウサギでもあるましい、主食になるサラダなどありえません」と返事がくる。「いやいや、サーロインステーキ入りのサラダとかロブスター入りのサラダとかあるじゃありませんか」と返したが、どんなサラダを作ってくれるのか?
この時期に有難いことであるが大きなプロジェクトの仕事が始まろうとしており仕事は忙しい。しかし今日は佐野さんの希望にあわせ午後1時過ぎに会社を出た。
佐野さんのところに向かう途中で原ちゃんからメッセージがはいっていた。電話をかけると、「原選手、今回は棄権します」ということであった。先週は気合が入っていたので私は原ちゃんも今週は早い時間に出たかったのかと思っていたが、そうではなかったようで昼早くに出発ということで気合が萎えてしまったようだ。しかし斉藤さんは一人で仕事が終わってから来るそうだからさすがに気合が入っている。その気合で主食のサラダを作ってもらえたらとおもうのであるが。
さて、7時ごろマンモスについてマーケットで夕食にする出来合いの食事を買う。鳥の揚げとサラダ数種。マンモスの街中には結構人が出ていたが、シャモニーに着くと駐車場は空いていた。先週末に2メートルの雪が降ったが、その後の暖かさで雪はかなり消えている。それでも駐車場の端には積み上げられた雪の壁があり、部屋の中からはべランダにできた雪の壁で外がほとんど見えない。
しばらく来なかった間に飲み物の蓄えがなくなっていた。今回はビール係りの原ちゃんの急な棄権でビールは冷蔵庫に残っていた4缶と佐野さんが持ってきた半ケースしかない。ワインもないが ウオッカ、焼酎、はあるのでとりあえずは何とかなりそう。
佐野さんと飲んで転寝をしていたら12時半過ぎにワインが菊池の伸ちゃんと供に到着、あ、逆か?、斉藤さんもまもなく到着し、その後2時まで宴会して就寝。
レーククローリーと夕暮れのマンモスのシルエットと駐車場に出来た雪の壁
翌朝、天気予報は良くないと言っていたのにベランダに空いたわずかな隙間から外を見ると段々と青空になってきた。9時に斉藤さんと先に出発する。風が強い。ゲレンデにはまだかなりの雪がある。すでに昨日、マンモスは今年も7月4日の独立記念日まで営業するとアナウンスしている。
5番を滑ってみると温かい風に一晩吹かれ、ゲレンデの雪は柔らかく滑りやすくなっている。
大雪でリフト乗り場がかなり埋まっている。私と仏の仮面をかぶった斉藤さん。
マッコイステーションに抜け、スタンピーを滑っていると嘉藤さんと会った。嘉藤さんは2週間くらい前からマンモスに滞在している日本からの鈴木さん夫妻を案内してこのところマンモスとエルエーを行ったり来たりしている。何度もお会いしている鈴木夫妻だが奥さんは相変わらず年齢を感じさせないスキーへの情熱を持って滑っておられる。
11時半、昼休みにマッコイステーションに入って佐野さん、菊池さんを待つが約束の時間になってもなかなか二人が来ない。ビールと食べ物を買って先に食べていると30分遅れで佐野さん菊池さんが現れた。彼らは10時半にシャモニーを出たというから数本しか滑っていない。食後に嘉藤さん達と何本か滑ることに。午後からさらに風が強くなり数本滑った佐野さん菊池さんはもう、キャニオンロッジの方に戻るという。
今日は山頂に行くゴンドラは動いているが強風で良くなさそうなので、もっぱら下のゲレンデを滑る。天候は幾分雲があるが晴れている。斉藤さんは相変わらずタフである。斉藤さんのペースで滑り続け、瘤を滑りたい私と、今年は瘤の滑りを勉強したいという斉藤さんと瘤斜面を集中的に滑ることにする。
春はモーグルの季節である。マンモスには難易度の高い順にウエストボール、アクト、レッドウイングと3つ我々がよく滑る瘤斜面がある。
2本ほど滑ってみたがレッドウイングはまだ瘤が小さくあまり練習にならないのでアクトに移動することにする。こちらの瘤斜面は滑りがいがあり面白いが、4本ほど滑るとさすがに足がよれて来た。斉藤さんによる獄刑、山中引き回しの刑は引き回す方も疲れるようである。斉藤さんの顔色を見ながら「もうあがりましょうか?」と提案すると執行官斉藤さんも結構お疲れのようですぐに同意。
鈴木さんご夫婦と。マッコイもまだ深い雪に埋まっている
そろって記念撮影。
3時過ぎにシャモニーに戻るとすでに菊池さんはジャグジーから戻っていた。まだジャグジーにいる佐野さんに合流しようかと用意をしているうちに佐野さんが戻ってきてしまった。斉藤さんとワインを持ってジャグジーに行く。先ほどまで少し崩れかけていたと思った天候が持ち直して良くなっている。ジャグジーに浸かると綺麗な真っ青な空が頭上に広がっている。心地よい風が杉の葉を揺らす。これが日本の悪夢のような被災地の空に繋がっているとは信じられない平和な風景である。
斉藤さんと日本の震災の話をする。善良なジャパニースアメリカン新潟県人になろうとしている斉藤さんは震災に関してもしっかりした考えを持っているようであるが、私はだまされない。言うことは立派でもどこまで行動が伴なうか?どう見てもこの体型は自分だけ旨い物を食べているとしか思えないのである。斉藤さんは本当に仏のように善良そうな面構えと布袋様体型で得をしているとおもう。逆に言えばその仮面にだまされた人も多いのではないかと思うのである。ハハハ。
夕飯は豚肉のカツレットと味噌汁を私が作り、斉藤さんがサラダを2品。カツレットは豚肉を叩き、小麦粉をかけ、溶いた卵にまぶし、細かく砕いたパン粉を入れた袋の中に入れ振る。それをフライパンに薄く引いた油で揚げる。
ソースは味噌、しょうゆ、黒酢、砂糖に細かくチッブしたにんにくをいれ電子レンジで暖めた物。
斉藤さんのサラダは主食になるサラダをリクエストしたのに、これが本当にウサギさんのサラダでステーキもロブスターも入っていない。「そんなの入れたらサラダじゃない」という斉藤さんの説も一理あるが、またこの善良顔でそう言われるとごまかされてしまう。
でもサラダの他にマーボ豆腐を作ってくれた。これはサラダより旨かったですよ。
。
スタンピーで頭上をリフトで行く佐野さんと菊池さん。 やっぱり今日はスタンピーとマンボが滑り易い。 レッドウイングの斜面。
サラダ係りの斉藤さんと、今日の料理。
朝7時前に起床。今日も風があるが晴天である。昨夜わずかな降雪があったようで車がうっすらと雪化粧している。しかしこの量ではゲレンデのコンデションは変わらない。
4人そろってゲレンデにでて見ると昨日よりかなり寒く朝のゲレンデはカチカチでアイシーのコンデションである。「これはもうセメントかスケートリングだね」と愚痴りながら、それでも何処に幾分ましな斜面がないかと探しながら滑るがどこも固い。陽の暖かさで雪が緩まなければこのコンデションは改善しない。
斉藤さんが山頂に見える雪質の方が良さそうだと言うので、ゴンドラで山頂に上がることになった。途中私はゴンドラの真下に見えるクライマックスの雪のつき方を見て、ここを滑ろうと提案するが佐野さん、斉藤さんがデービスランの方が良いと主張する。ゴンドラを降り私が山頂で写真を取っている間に3人はデービスに向かってしまった。山頂のポールの先が雪の中からわずかしか出ていない。まだまだマンモスは大雪に埋まっていることが判る。
絶対クライマックスの斜面の方が雪のカバーが良いのに。写真を撮り終え、しょうがなくデービスに向かう3人を追う。
デービスの滑り出しはオーバーハングになっていた。佐野さんが気合を入れてオーバーハングから滑り出す。私も後を追う。すぐにソフトとハードの雪がミックスした滑りにくい斜面であることがわかる。先を行く3人も苦労している。
下に下りて反省会、こんな斜面を選んだ張本人は誰だ?私はクライマックスが良いと言ったのにどうも最近佐野さんのチョイスで失敗している。昔は佐野さんは私の選んだ斜面を素直について来たのに最近は自己主張をする。そしてここ一番ではかなりの確率で失敗しているのである。しかし反省がない、その経験を生かさない、雪質を読めないの3ないスキーヤーの3No (さの)さんである。
ゲレンデのコンデションを滑らずに見極めるのは難しい「善良そうな人と、ゲレンデの状態は 見てくれで騙されてはいけない」という教訓を忘れないてほしい。
薄っすらと雪をかぶった車。デービスランの遠景。山頂のポールが150CMくらいしか出ていない。
勇敢にデービスランのオーバーハングを降りる佐野さん、しかし格好良かったのはここまで、雪質が悪く、この後こけていた。下から見たオーバーハング。
やっぱりこういう日にはスタンピーの斜面が一番初めに緩み、滑り易くなる。こんなコンデションの日でも大概その日一番のコンデションを保っているのがスタンピーである。思ったとおりスタンピーの下部は他のコースと比べればそれなりに滑りやすいコンデションになって来ていた。
いつもより早く、11時にはキャニオンロッジに向かって引き上げる。
晴天である。風があるせいか空気が綺麗に澄み白い雪山がまぶしく輝いている。
今日の空はまた一段と濃紺に見える。この空が日本の被災地まで続いているはずだが被災地では季節はずれの雪を降らせ暖房の無い被災者を震えさせている。出来ることなら雪をこちらに降らせ、青空を東北に与えてほしい。青空はきっと人々の気持ちを明るくさせ、今日一日を頑張ろうという力を与えてくれる。
抜けるような濃紺の空。昼食のカツ丼の用意をしてくれる斉藤さんと、洗いものをする佐野さん、それを近くで茶化す私。
こんな時に趣味のスキーをやっていて良いのかともおもうが、日本では特に経済的効果を考えれば余裕のある人はお金を使わなければならない。浮かれてはならないが、ここで必要の無いところまで自粛してお金、物が動かなくなると、震災で落ち込んだ景気がさらに落ち込み全国に不況感が広がってしまう。
電力不足の不安はあるが、出来るところから早く普通の生活に戻ることが日本全体を活性化させ復興を早めることになると信じる。