粉雪舞う 2006年3月25日
マンモスはこの3週間、毎週嵐が来ており気温も低くスキーヤーのパラダイスである。この一番コンデションの良い時に一ヶ月間私は風邪を引いたりでスキーにいけなかった。
久しぶりのマンモス、この週末の天気予報は土曜が雪、日曜は晴れと言う事であったが、マンモスに近づいても星空が見えている。真夜中に着いたマンモスは10センチほどの雪化粧をしていた。日中はかなりの寒さであったようで吹けば飛ぶような軽い粉雪である。これは明日の朝が楽しみだ。
3月18日、昨夜は2時半ごろ寝たため、朝9時にスキー場に行くとすでに大勢のスキーヤーが滑っている。昨日は山頂まで開いていなかったそうだが今日は全面オープンして快晴である。コンデションが良いと、朝一番のコースの選択を迷う、まして今日はすでに8時半のオープンに出遅れている。ゲレンデを見るとマンモスには珍しく、10センチほどの積雪があるのにグルーム(整地)してない。私は自然のままの雪が好きだが、マンモスはいつも主なコースの新雪を踏み固めてしまうのである。それが今日はどうした事かグルームしてないので私としては嬉しい状態である。しかも天気予報ははずれて快晴で無風。混んでいるキャニオンエックスプレスのリフトを避けて8番リフトから22番に乗り、さらに5番に乗り継いで裏側の25番のリフト乗り場に下りていく斜面を目指すことにした。
ここは比較的あまり人が入らない林間コースがあり、最初の滑り出しのところにかなり大きな斜面がある。この斜面が私のお勧めで、待ちきれずにリフトを降りると皆を置いていち早く斜面に突っ込んで行く。すでにかなり荒されてはいるが新雪の感触がたっぷりと残っている。なんと言ってもスキーの楽しみは新雪に尽きる、この新雪にスキーを浮かせて滑る技術を身に付けるのは上級者のスキーヤーでないと出来ない。ふわりふわりと柔らか雪の上を右に左にと舞うのはスキーヤーの究極の喜びであると思う。この喜びを知らずしてスキーヤーといえないと思うが、そこまで行くには何年もかかるのである。近年流行ってきたスノーボードは幅があるので深雪に乗り易く、中級者でもこの感覚が味わえてしまう。そんな所にスキーヤーが減りスノーボーダーが増える理由の一端があるのかもしれない。逆にスキーはそれだけ奥が深く難しい。
山頂に行くとさらに雪は深く柔らかい。佐野さん、原ちゃんとは違うコースで23番リフトの直ぐ横のドロップアウトと呼ばれるダブルブラックダイヤモンドを下りる。雪が付いているので普段より滑りやすいとはいい急斜面である。
昼、マッコイステーションに行くと嘉藤さん、マユミちゃんと嘉藤さんの日本から滑りに来ている友人と会った。午後から一緒に滑っているとまた雪が降り始めた。雪はだんだんと強くなり積もり始める。これで明日の朝晴れてくれたら理想的に2日間新雪を滑られる事となる。
嘉藤さんたちは今夜はマンモスに宿が取れなかったので隣のジューンレークに移動するという。ジューンレークはマンモスと同じ経営のスキー場で20分ほど北に上がったところにある。巨大マンモスの影に隠れてしまっているが、なかなか良いスキー場である。マンモスに宿が取れなかった人には私はいつもジューンレークを勧めている。(後で聞いた話では彼らは日曜の朝、あまり人のいないジューンレークで3人だけで新雪の斜面を独占して、素晴しいスキーが出来たそうだ。)
その夜は牡蠣鍋を囲みながらワールド ベースボール クラッシックの日本対韓国の準決勝戦を観る。アメリカが早々と姿を消し、番狂わせの多い大会であったが、韓国に二敗の後の勝利は気分爽快、これでキューバとの間で決勝が月曜日に行われる。結果的に運に恵まれここまで勝ち残った日本はキューバにも勝つような気がする。外はしんしんと雪が降っている。
佐野さん朝の余裕 原ちゃんとブライヤン22番リフト
原ちゃん新雪を行く 夕方からまた降り出した雪
日曜の朝、窓から青空が見える。昨日同様、風も無くスキー日和のようだ、新雪が15センチほど積もっている。昨日の二の舞をしないように6時半に起きてコーヒーを入れて7時には皆を起こし、私は車の雪を払いに外に出てみる。粉雪が車を覆っている。スキー場に向かう車が列を成しているが、ここは50メートルほど先がスキー場のキャニオンロッジの駐車場であるから歩いていけるアドバンテージは大きい。今日は遅れを取りたくないので戻って全員を急がせ8時にはキャニオンロッジに向かう。雪山が青空にまぶしい。ゲレンデは今日もグルームしてなく新雪に覆われている。手付かずの新雪を滑るのは朝の30分が勝負である。30分でほとんどの斜面は荒らされてしまうので何処を選ぶかが問題だ。気持ちが高ぶる。昨日の朝のパターンを参考に朝の一番どこを滑るかリフト上で作戦を練る。やがて最初のスキーヤーがリフトの下の斜面を降りてくる。ヴァージンスノーにシュプールを残しながら気持ち良さそうに行くのを見ると思わずリフト上から我々の分を残しておいてくれよと叫びたい気持ちである。ともかく最初は目の前の斜面をキャニオンロッジに下りようということになり、それぞれがリフト上から滑るラインを探す。私は普段ほとんど滑る事のないちょっと穴場のラインを読んで狙いを定めた。後で佐野さんに笑われたがリフト下り場がスタートラインの競馬馬のように、着くと同時に飛び出してまだほとんど荒されていないその斜面に向かう。
朝の記念写真 原ちゃん
ベストの斜面ではないが目の前にほぼ手付かずの雪面が広がっている。スキーを雪面に浮かべ自分のシュプールをゲレンデに描く。粉雪を巻き上げてしばらく滑ってから止まって自分の滑った後を振り返ると綺麗な跡が残っている。原ちゃんがすぐ後を下りてくる。佐野さんはもう一本先の斜面を下りているようである。最高の気分でさらに先に進む。もう一度リフトに乗って戻ってきたらもうこの斜面も荒らされていることだろう。朝のうちの30分が勝負の新雪スキーである。次に5番リフトから25番に降りていく昨朝滑った斜面に向かう。この斜面はまだ新雪が残っていた。佐野さんと原ちゃんの写真をかなり撮っていたので、原ちゃんに私の滑る写真を撮ってくれるよう頼みカメラを渡し、先に下りてもらう。用意が出来たのを見て滑り出す。リズム良く雪に乗ったショートターンをしながら斜面を滑りおりる。足元の粉雪が舞う。孫悟空が雲に乗って天界から下りる気分とでも言おうか、久しぶりに良いシチュエーションで良い写真が撮れたはずである。原ちゃんに「撮れた?」と聞いたら「3枚ほど撮れたと思います」というので直ぐに再生してみたら最初に出てきたのは見覚えのある写真、嫌な予感、なんと撮れていなかった。もうこの斜面は使えないのでがっかりである。機械音痴と誉れの高い佐野さんより良いかと思った原ちゃんであったが私の説明不足であったか、残念なシャターチャンスを逃したのであった。その下に続くいくぶんなだらかな斜面でもう一度トライ。今度は撮れているのを確認できた。
右端が私のシュプール 粉雪を蹴って滑る私
マンモスで一番長い9番リフトに乗り山間コースを滑るとスキーは自然と一体になったスポーツである事を改めて感じる。原ちゃんはここで体力を使い切って、脱落してキャニオンロッジに戻るというので、私は佐野さんとウエストボールにあるモーグルに向かう。斜面には凸凹が出来ているが、柔らかいので積極的にスピードを出して瘤を攻められる。足は疲れているが、結構スピードに乗った滑りが出来た。12時にキャニオンロッジに集合ということだったが、11時ごろに佐野さんも疲れが足に来ており、先に引き上げるというので、キャニオンロッジに向かう。ザ アクトの瘤斜面を滑り佐野さんとわかれる。私はまだ体調が良いのでまた戻って同じコースのモーグルに挑む。瘤を滑るためには何時は瘤のある斜面の上で一度止まって体力を回復させてから斜面を滑る。そのつもりでアクトの斜面の上まで来たら、ちょうど斜面の上部にスキーヤーが二人休んでこちらを見ているので、ちょっと良い所を見せようとそのまま斜面に入ってゆく。結構大きな瘤が出来ているが飛ばされないように柔らかな瘤の側面を舐めながらスキーを滑らす。積極的に攻めるには後傾にならないように、早い切り替えしをしながら重心を前に進めることを心がける。雪がよいと普段出来ない事も出来る気がする。斜面の上で一度休んでから滑ると、この斜面を一気に滑る事が出来るが、今回は観客がいたのでリフトを降りた所から休まずにそのまま瘤斜面に入っている。何とか下まで滑り切りたい所であるが、やはり私も足に来ていた。後わずかで完走という所でついに、こらえきれずに山側に座り込むように倒れる。これも立派な1年ぶりの転倒である。
まもなく集合時間であるが、もう一本滑りたくて同じコースを戻り、今回最後の滑りとなる一本を今度はザ アクトの斜面の前でたっぷり休んで体力の回復を待って、無事滑り下りて終了。
午後降って、午前中晴れるというパターンで2日間にわたり新雪を滑られる機会に恵まれることは長いスキー人生でもあまりなかった。久しぶりの素晴しいスキー三昧の週末であった。