2010年11月15日
小太りの魔法使い斉藤(太)さんとマンモスに向かう。(前回の「珍客来訪」参照)
今年は11月の第二週がスキー場のオープニングとなる。毎年オープニングに行っていたし、今回もだいぶ前からオープニングディーにはマンモスへという予定は決まっていた。だが今月になり原ちゃんが腰痛で、菊池さんは所用で、さらには出発前日になって佐野さんから膝通が出て行けなくなったと連絡が入った。佐野さん2週間前、マンモスでハイキングした時は「もうずっと一年くらい膝痛も痛風も出ていないし絶好調だよー!」と調子こいていたからね。痛みのない時こそ気をつけて自粛しないとね。早く回復する事を祈ります。
結局「マンモスいきたーい」と言っていた斉藤さんと私だけで行く事となった。11月最後の週末にあるサンクスギビングの連休は毎年3-4泊しているが、今年私は姪の結婚式への出席でその時期は日本に短期一時帰国するので12月半ばまで滑る機会がない。斉藤さんもその時期、日本からご兄弟が来られるそうで、そのお世話でスキーに来られないという。そんなこんなで他の人がいけなくとも今回斉藤さんと二人でもいける時に行っておきたいという訳である。
斉藤さんは今までこのエッセイでは斉藤(太)と書いてきたが、それは佐野さんのビジネスパートナーの斉藤(細)ちゃんと比べて体型が太いのでそのように区別してきたものである。斉藤さんには斉藤健司という立派な名前があるので、これからは斉藤(健)と書かせて頂くことにする。もう一人の斉藤(細)ちゃんは通称ヒロちゃんで斉藤(ヒロ)と書くことにする。
最近よく登場するこの斉藤)(健)さんは, 私らのスキー仲間の中では最年長である。と言っても佐野さんや、私とは数歳しか違わないのではあるが・・・。スキーのオフシーズンにはローラホッケーをしていて体力があり、スキーも休まず滑り続けるタフガイである。
私の家に来てもらって夕方6時半に出発、フリーウエーに乗ると道路が混んでいる。今回サンタモニカに寄る必要がないので、斉藤さんの提案で110フリーウェーでダウンタウン経由で行くことにする。いくぶん遠回りになるが、渋滞はないはずだという。
110に乗ると確かに車は流れている。時間的にセーブにならないが、運転はストレスがなく快適である。モハベで運転を変わりインデペンデントまでは斉藤さんが運転してくれた。
インデペンデントでまた運転を私に代わり、上弦の月が照らすルート395を走っていると2車線の中央分離帯に1mほどの小鹿が立ちすくんでいる。前の車の影から急に現れたので寸前で気づき、あと2歩小鹿が前に出ていれば跳ねてしまう距離であった。この辺は野生の鹿が多い。最近のニュースで全米で鹿と車の接触で犠牲になる人が毎年200人もいるそうである。実際、今まで何度かこの付近で車に跳ねられた鹿を見ている。
前回の熊といい、動物が人間の近くに現れるのは人間が彼らの居場所を奪っているからである。1時ごろマンモスに到着。シャモニーの駐車場は三分の一くらいしか埋まっていない。
翌日は朝からご飯を炊いて日本の旅館で出るような純和食の朝飯。
外は風もなく、良い天気である。今シーズンまだあまり自然の雪が降っていないので雪不足のオープニングを予想していた。2週間前に来たときから比べると周辺の雪が増えている。一週間まえに一度ストームが来て雪を落としている。ここから歩いていけるキャニオンロッジはまだ開いていない。
メインロッジはマンモスの街中のザ・ビレッジから森の中の道路を10分ほど走らなければならない。9時少しにメインロッジに向かうとすでに道路の両側は車で埋まっている。青空と2週間前より白い雪山が美しい。手前のスタンピーの駐車場に車を止めてそこからシャトルバスでメインロッジに向かうことにした。
駐車場の目の前のスタンピーの斜面はまだ人口雪を作っている最中であるが、メインロッジに近づくと想像以上に雪のカバーは良さそうである。メインロッジのまわりのブロードウエー、マンボ、フォリスト、レースコールなど主なコースはすでにオープンしている。さらにはその上のフェースリフトの裏表、ウエストボール、山頂からのコニースもオープンしている。雪質もアイシーでなく、まずまずである。
納豆、冷奴、漬物、海苔、味噌汁 まだオープン前のスタンピー シャトルでメインロジへ メインロッジ前
何本か足慣らしをした後、フェースの表やウエストボールを滑ってみる。この時期には珍しく凸凹の瘤が出来ている。谷になっているウエストボールは何時も我々がモーグルを楽しむ斜面であるが、季節外れの程よい瘤が出来ていて、しかもその雪は柔らかく、楽しめる。オープニングディーとしては文句なしのコンデションである。
シーズン初日の足慣らしのつもりが気が付けば休みなく11時半まで滑っていた。早くも斉藤さんペースで太ももが痛くなってきた。これはいけない、飛ばしすぎ。
昼休みを取って午後からは少しペースを落とし、じっくりと基本の練習をする。課題を持って滑ると、あまり選択のない斜面でも飽きないで滑れる。
一緒のリフトに乗り合わせた人が話しかけてくる。何処から来たというからトーレンスと言ったら「俺はトーレンスのメモリアル ホスピタルで生まれた」と言う。私もたまにお世話になる病院である。彼は35年前にマンモスに越してここに住んでいる人で、「マンモスでの人生の方が良いぞ」と言っていた。
初滑りは嬉しい、 ブロードウエーも コニースもほぼ障害物なく雪に覆われている
まだスタンピーの斜面はオープンしていないが、マンボーから行けば何とか駐車場まで下りるに充分なくらいの雪がある。ちょっと違反ではあるが、スタンピーに止めた車の横まで直接滑り下りることが出来た。2時に上がって、食事の下ごしらえをしてジャグジーに行く。ジャグジーは我々の貸切りであった。
斉藤さんは知れば知るほど本当に器用な人でアイスボックスで作った手作り納豆を前回についで今回も持参してくれた。豆を茹でて、売っている納豆を少し混ぜて納豆菌を植え付け、アイスボックスに湯たんぽを入れて温度を保ち、納豆を作ったという。これがよく出来ていて、とっても美味しい。
元々彼はアメリカに来る前は戦場カメラマン、いやいや、日本で商業カメラマンをして、そこそこの地位を築いていたそうだ。
魔法のほうきは乗り心地が悪いので、今度は魔法の絨毯が欲しいとおっしゃる。
夕飯は二人ながら豪華な料理が並ぶ。斉藤さんがエビちりを作ってくれて、私は豚肉のオイスターターソース炒め。料理の腕に覚えのある二人で作る料理は二人だけで食べるにはもったいない。
フェースのパーティー小屋、じゃなくて監視小屋、 ウエストボールを滑る。 山頂のポールは真冬には腰掛けられる高さに埋まる
コニースの斉藤さんとその斜面・ 夕飯のエビチリと豚オイスターソースのステーキ
翌朝は9時前から滑り始めた。今回は石蹴りをしても良い様に古いスキーを持って来たが、どうもモーグルにはこの古いスキーの方が良い様である。気持ちよく一気に下まで滑る。
ウエストボールは谷に積もった雪が柔らかく、ほど良い大きさの瘤が並び、隠れている岩に気をつければ今回一番のいい雪質で、滑って面白い斜面である。
「モモ痛3年、柿8年」とかで斉藤さんはまだシーズン初めでモーグルを滑ると私以上に足が痛いらしい。ここは狙い所と何度かウエストボールで責める。責める狙いはウエストボールではなく斉藤さんの足である。このタフなおじさんは今のうちに叩いておかないとシーズン中、調子に乗るから。ははは。
朝、夜明けの風景 今日の雪質も悪くない、 フェースの表には瘤が出来ている. 魔法のほうきでな、くリフトで山頂に向かう斉藤さん
私はあまりトレーニングをしていなかったのに、今のところ絶好調である。ウエストボールの瘤斜面をほぼ一滑りで下りる。シーズン初めとしては快挙である。
12時まで休みなく滑り続けて、最後は今日もまだオープンしていないスタンピーの駐車場に直接滑り降りて終了となった。
そういえば例年あるオープニングのシャンペントーストが今年はなかった。でも、すでにここまで多彩なコースが開いているし、連夜人口雪を作ってオープニングからマンモスもやる気を見せているのは嬉しい事である。オープニングとしては悪くない、後もう一回ストームが来ればサンクスギヴィングのスキーコンデションは最高であろう。それまでに佐野さんや原ちゃんが滑れる位に回復して、私がこれなくてもスキーを楽しめたらいいのだが。
山頂に向かうゴンドラから、山頂のゴンドラ小屋から出ると目の前にポールが立っている。ゲレンデへは22段階段を下りなければならなかった。
最近マネージメント棟まで行かなくともインターネットが部屋から繋がる。
マンモスに来ていてもニュースが見られる。政権交代以来、無策の民主党に振り回された日本の政治に失望するが、私は民主党より自民党の方がいいと言っている訳ではないし、一度分散して野党に落ちてしまった今の自民党では政権を奪回しても期待できない。
専門家である官僚の意見を聞かない「政治主導」で国民意識からかけ離れた政策を取っていた民主党の枝野幹事長が今頃になって「政治主導はうかつであった」と言い、管首相も米国重視、官僚重視をいいだしている。気づくのが遅すぎる。すでに世界第二の経済力を失い、外交的にも国際的な地位、信頼を失ったいま、担当政党の交代や首相の交代でこのダメージを簡単に回復出来るはずがない。痛手は深いのである。
政党の名簿順位上位の者から当選という比例代表制の選挙制度にも大いに問題があるとおもう。国民ではなく政党が決めた順位で政治を何も知らないタレントや有名人が突然国会議員になれる制度はおかしいと思うのである。そんな政権維持のための数合わせ議員はいらないから議員数を減らしプロの政治家だけにして欲しい。国会議員を仕分けする。それが一番役に立つ仕分けであると私は思う。
帰り道は、斉藤さんのダジャレタイム。
道路に薪を落として拾っている人がいた。「薪をマキ散らして、ログでもない野郎だ!」牧場に牛がいっぱいいれば「ぎゅうぎゅう詰め」。
冬時間になり暗くなり始めた夕暮れのモハベ砂漠を斉藤さんのダジャレを聞きながら南下する。やがてまた上弦の月が空に浮かぶ。
人数的にはちょっと寂しいオープニングとなったが、今期も気の置けない仲間たちと楽しいスキーシーズンが過ごせるといいね。
モハベ砂漠の夕暮れ
完