春なのに           2010年 6月2日    小堺 高志

 

5月になりまたエルエーに紫の花ジャカランがの咲き誇る季節が訪れた。

今週もマンモスは15cmほどの雪が降り、今期のトータル積雪量が14m72cmとなり観測史上3番目の大雪となった。

 

今回はメモリアルホリデーの3連休となる。佐野さんが日系人のマイク後藤と一緒に先にでているので、私達は原ちゃんと7時に斉藤さんの所に集合して、3人でマンモスに向うこととなった。集合場所の斉藤さんの所はピコリビエラという私の所からはマンモスに向かうにはかなり遠回りの北東にある。斉藤さんは器用な人で最近2ヶ月かけて家の内装の改築を自分でして、家をすっかり綺麗にしていた。

 

ダウンタウンで夕食をとる。ダウンタウンのリトル東京に来るのは久しぶりである。昔、初めてアメリカに来て3ヶ月暮らしたのがここリトル東京であった。(このホームページのトップからその他の「夏の風」をお読みください)リトル東京はかなり綺麗になっていたが、最近 観光客が少なく歩いているのは近くの中国コミュニティーから訪れる中国人が主な客のようである。日本からの観光客に頼っていた、お店やホテルは潰れたり、閑古鳥が鳴いている状態である。ビールを飲んで最初の運転はビールを飲まなかった斉藤さんにお願いする。

ダウンタウンを出たのはすでに9時近かった。「後で運転手変わってくださいよ」というので、「途中で変わりましょう。ルート395を下りたあたりで」、全行程500キロほど、395号を下りたら宿のシャモニーまでは5キロくらいのものである。

 

ロスアンジェルス動物園の近くを通る。動物の話になり、昔この近くで私は人生で初めて乗馬をした。 象も泳げる。たとえ泳げない奴がいたとしても象は鼻が水面に出ていれば河を渡れる。泳げない奴がもっと深いところにいったらどうするか?斉藤さん曰く「いやー、象は幾らでも鼻が伸びるのですよ。ゾウフクといいますがね」 と落としてくれる。

 

やがて満月に近い月が上がってきた。ビッグパインで原ちゃんが運転を代わる。今日はなぜか道路にいつも見ない野ウサギをいっぱい見た。道路に出てきて車の前後を横断するので引かれているうさちゃんも5羽くらい見た。おっと危ない。頻繁に道路にウサギが飛ぶ出してくる。繁殖期で満月の夜のデートと見たが、斉藤さんの見立てはチキンレースをしているのだと言う。仲間に勇気を見せるために誰が一番車の近くを横切れるか競い合っていると言う。怖気づいて道路の横で立ち止まった奴はあとで仲間にチキン呼ばわりされる、と斉藤さんが説明してくれる。ハハハ、それもありなん。

予定より早いが、ビショップから私が運転する。

マンモスに近づくと、まだ沢山の雪を抱いたマンモスが月光に照らされ淡青に夜空に浮かび上がる。シャモニーに着いたのは2時。連休だというのに駐車場はがらがらである。外気は寒い。



綺麗に自分で内装をした斉藤さん宅、  途中でトイレタイム

 

翌朝、いい天候である今日の空は高く澄んで雲ひとつない。昨日までスキー班と言っていた原ちゃんも佐野さん、マイクとともに釣り班に行ってしまった。春になると劣勢になるスキー班の斉藤さんと二人メインロッジに向かう。

今の季節、昼暖かく夜寒い気候は雪が降っても夜間にすぐに硬くガリガリの斜面になり、朝方融けて昼前にベストコンデションとなり、午後には重い春スキーのコンデションとなる。

 

と、覚悟して来たのだが、1本スタンピーアレーを滑って驚いた。ほぼ木曜に降った15cmほどの新雪が残っている。

金曜が昼間も寒かったせいか新雪が昼間も融けずに、まだゲレンデのあちこちに残っているのである。「え!今日は5月29日、もう5月も終わろうとしてるよね?」この時期にしては最高に近いコンデションである。スタンピーアレーとマンボを何本か滑って、フェースの裏に行く。硬くなく充分エッジが食い込む良い雪である。5番にいってリフトを下りる前の左手の斜面をスキーヤーがりてくる。かなり雪煙をあげ、柔らかそうな雪である。早速、その斜面にいってみる。斉藤さんが先をいく、後をつけるとちょっと重い雪だが新雪である。スキーを浮かせて気持ちよく滑ることができた。「いい雪じゃないですか!」と、この季節にこれだけの雪にめぐり合えた事を感謝する。


向けるような青空に季節外れの新雪



 

ゴンドラで山頂にいくと、山全体を覆う雪の量も3週間前に来た時とほとんど変わっていない。

デービスランに行くと急斜面で柔らかい雪が残っている。

情け容赦ない斉藤さんに山中引き回しの刑を受け、疲れてきた。スタンピーアレーの斜面を見ながら雪上のリクライニングチェアでしばらく休む。持ってきた缶ビールを飲みながら最高の気分である。いつも間にか、周りにはかなりのスキーヤーがでている。

 

休憩の後、モーグルコースのあるウエストボールに行くと、ちょうどいい大きさの瘤に滑り易い硬さの雪でいい状態いである。しかし何せ斉藤さんが休ませてくれないので、2回目にはもう足が付いて来ない。

 

23番リフトに行き山頂からコニースを行く。ここは真冬でも硬いガリガリのコンデションことが多い斜面であるが、今日は全体が柔らかく一気に斜面下までショトターンで下りてしまった。もう一度23番でスコティーを下り、メインロッジにいく。ここのデッキもいつの間にかスキー客でいっぱいである。



ミルカフェで一休み、山頂にはまだ10メートル近い雪が


滑りながらのワンショット山頂に向う23番リフトとハングマンの斜面
 

午後2時にあがって、斉藤さんが今日のメニューである「帝国ホテル風カレー」をなぜかハウスジャワカレーで作る。下ごしらえが終わったら釣り班の様子を見に行こうと話していたら、4時前に釣り班が帰ってきてしまった。うちには二人乗りのゴムボートがある。佐野さんがゴムボートの上から2匹釣ってきた。今年の原ちゃんの釣りはいまだに成果なく不振である。

 

ジャグジーでゆっくりした後、遅めの食事になる。定刻でない帝国ホテルカレーはコクがあり美味かったが唐辛子がかなり入っていて、私には辛すぎであった。でも三枚におろして作った鱒のムニエルは最高でした。本当に斉藤さんは何でも器用にこなす。器用でないのはxxxだけのようである。



佐野さんが釣ったトラウトを3枚におろしムニエル
 

日曜の朝、今日も抜けるような快晴。

釣り班は昨日クローリー湖で会った見ず知らずの人に彼らのボートに乗せてもらう約束があるそうで、昨日より早く7時15分に出発した。見ず知らずの人には付いて行かないようにという世知辛い教育は受けてない世代である。いやいやそう言えば、会ったばかりの佐野さん達をボート乗りに誘ってくれる人がいるアメリカは日本のように閉鎖的ではないとも言える。我々もよくはじめてあった人をシャモニーの夕食に誘うけどね。

 

斉藤さんと私の二名だけのスキー班も昨日帰りに駐車場から溢れた車が道路ぞいに並んでいたのを見ているので今朝は8時半に出発する。

昨日は日中暖かかったので融けた雪が夜間に凍り、コンデションは昨日のようにはいかない。昨日が異常だったのだから、これが正しい春の雪質である。

1本滑ってみると、それでも下の方は緩んで来ている。一番標高の低いところにあるコースの一つローラーコーストのリフトが動いているのを見つける。昨日は気づかなかった。これを滑ってみたらドンピシャのタイミングで今が一番いい具合になっていた。気持ちよく2本同じコースを滑り、昨日良かった5番リフトに乗る。そのリフトで何度か会ったことのある戸川夫妻に会い、一緒に何本か滑る。今年斉藤さん日本でスキーの一級を取ってきた、去年の2級一発合格に次ぐ快挙であるが、時たま教えたい病が出る。戸川夫妻を相手に病気がでてきたので、私は一人ウエストボールのモーグル斜面に向かう。



春ならの青い空とウエストボールの凶悪な瘤コース


5番リフトの前の私と、オー、こうしてみるとなかなかハンサムは斉藤(太)さん。フェースリフトで会った戸川夫妻。
 

ここには昨日我々が滑った時にはなかったもう一本のモーグルコースが出来ていた。昨日の午後、我々が帰ってから相当滑り込まれたものと見える。昨日のままの瘤なら今日はさらに雪が柔らかくなり、赤子の手をひねようなものだと勇んで向ったのだが、これがまた腕力の強い暴力的な赤子で、、、、抵抗を受け、殴る、蹴る、腕を後ろ手に取られるという逆襲にあい、すごすごと引き返してきたのである。瘤は昨日よりさらに深く、さらに細かくなっていた。

 

ゴンドラで山頂に上がり、ゴンドラの真下、クライマックスを下りてみる事にする。山頂は昼も温度が低いので比較的雪質は良いのだが、このコースはかなり急である。取りわけ滑り出しの所は2メートルくらいの絶壁になっている。でもそこを下りれば比較的滑り易くなる。

メートルくらい垂直に近いオーバーハングになっており滑り出だしは少し勇気が必要である。急斜面は息が上がり疲れる。

 

マッコイステーションの外でリクライニングシートに腰掛けて斉藤さんを待つと、まもなくフェースのリフトラインに斉藤さんを見つけ、合流する。

さてさて、斉藤さんとウエストボールにリベンジに向う。この凶暴な瘤を滑るにはともかく瘤の何処を削って制動をかけるかを考えなければならない。しかし昨日から斉藤さんに引き回され、足にかなりガタが来ている。短い距離なら何とかなるが、長くは続かない。斉藤さんは去年からモーグルを積極的に挑戦するようになり、ずいぶん良くなっていた。

 

斉藤さんはお歳に関わらず、ずいぶんと体力がある。私は最近運動していなかったし太ももが今にも痙攣を起しそうである。その上もう一本山頂からのコーニスを下りると、かなり限界になってきた。「斉藤さん、もう勘弁してください」と白旗を揚げるが、「それじゃあ、最後に5番で3本ほど滑って帰りましょう」と、言う。もう限界であるから、そこを1本に負けてもらって、その一本を何とか下りて、2時に引き揚げる。8時40分から滑っていたので、20本以上滑ってしまった。恐るべし、情け容赦ない偽仏、斉藤さん、もうその笑顔と甘い言葉に騙されないぞと思うんであった。 



写真にすると迫力がなくなるがクライマックスの入り口は80度くらいの急斜面である。
 

スキーを終えて、シャモニーに帰る途中、斉藤さんが「ちょっと街中のスキーセールを見ていきましょう」と言う。毎年メモリアルデーの週末はその季節最後のセールをしている。

実は私には買いたい物があったので渡りに船であるが、その事は顔に出さない。

私の親しいスキー仲間は、私のホームページのエッセイが自分の格好悪い部分は書いていないと非難する。いいでしょう、ここはご要望に答え、今回は書かないつもりであった話を書こう。

 

週末にマンモスに来る時は普通金曜日にエルエーを出ているが、その前にシャワーを浴びるのは木曜の夜。いつもは金曜の真夜中にマンモスに着くので、次にシャワーを浴びて着替えが出来るのはスキーの後、土曜の夜である。私にとって人生でこの丸2日間着替えが出来ないというシュチュエーションはマンモスに来るこの時くらいしかない。

 

今までの私の人生でも 昔、中近東を旅している時に一週間くらいシャワーを浴びられない時があったが、それでも着替えはしていた。さてさてここからが今回の秘密に使用と思った話である。

 

いつものように土曜日の夜ジャグジーに行く前に着替えを用意しようとしたら、着替えがない。

どうやら今回は下着を入れ忘れて来たようである。今履いている1枚しかないのである。

このままでは帰宅する月曜夜までの4日間着替えが出来ないことになる。清潔好きな私としてはオーマイゴッド!である。

斉藤さんと街中の何件かの運動具店のセール中のスキーなどを見ながら、実は下着を探す私。

 

主にスキー、スノボーの道具を売るお店に下着はあまり置いてない、山登りの商品も扱うお店でやっとスポーツ用のパンツを見つけた。値段をチェックすることなくキャシャーに持って行くと20%引きなのに25ドルだという。こんなに高いパンツを買うのは始めてであるが、しょうがない、そこは澄まして会計を済ます。

 

シャモニーに戻ると昼ごろには帰ると言っていた釣り班がまだ戻っていない。夕食の用意をして、待っていると5時になってやっと帰ってきた。今日の成果は3匹、またしても3匹とも佐野さんの釣った獲物であった。そのうちの1匹は、今まで見た中でもかなり大きい方のレインボートラウトである。このくらいの大きさになると鮭のような見てくれである。昨日湖で知り合った人に朝のうちはボートに乗せてもらってトローリングをしたが、釣れず、結局陸からの投げ込みで3匹とも釣ってきた。ボートに乗せてくれた2人はかなりの大酒のみで、ウイスキーボトルを抱えながらの釣りであったという。

 

その後、皆でジャグジーに行った時に、やっと無事に下着を着換える事ができたのである。

 

今日の夕飯は私が作る番である。

まだ昨日の斉藤さんのカレーが残っているのに、さらにサラダ、タップリと香料を加えた鱒の塩焼き、イタリヤ風鶏肉のトマト煮バジェル添え、豚肉しょうが焼きオイスターソース味、さらには豚汁、という豪華メニューである。

当然、食べきれないので、余ったのは持って帰るか捨てることになるが、明日の朝、昼とまだ食べなければならない。いつの間にか持ってきたワイン6本分も空になった。



昨日よりさらに大物のトラウトとその料理,  鶏肉とトマトバジル
 

3日目の朝、原ちゃんとマイクを残し、今日は佐野さんを入れて3人でゲレンデに向う。8時40分から滑り始める。昨日の朝一番でコンデションの良かったローラーコーストを今日も滑ろうと思い行くと、今日はリフトが動いていない。しょうがなくスタンピーに戻り、比較的滑り易いマンボなどを滑りながら雪面が融けて柔らかくなるのを待つ。朝方の10時くらいにはかなりの部分がちょうどいい硬さに解凍されスキーのエッジが効くようになってきた。

メインロッジの前のいつものレースコースが良かった。今回の3日間で今日初めてスキーをする佐野さんは元気に滑っているが、私はすでに昨日までの2日間の強行軍で太ももが悲鳴を上げている。

ドライクリークが変化があり雪も良く面白い。出来れば太ももが万全の時に滑りたかった。

最後にウエストボールに行き、モーグルコースに挑戦、深い瘤で今ひとつ滑りをつかめないまま今回は終了となった。

集合
予定の12時前にシャモニーに戻ると原ちゃんとマイクがいない。どうやらまた釣りに行った気配。普段の日なら予定通り戻らなくても夕飯を先に摂ればばいいことだが、最終日に予定の時間に戻らないのは困る。30分遅れなら何も言わないつもりだったが43分遅れで戻った二人に意見してしまった。
釣りはいつでもすぐに止められるリクレーションであるから、帰る日に仲間を30分以上待たすのは他のメンバーに対し失礼だと思うのである。しかし、私は親しい人にしか意見しないから、親しくなったから言ってくれたんだと喜んで欲しい。

 
2010年のメモリアルホリデーは春のこの時期のスキーコンデションとしては最高、大満足の3日間であった。さらには飽食の3日間でもあった。
あ、それと25ドルのパラゴニアのパンツはさすがに履き心地いい。皆さん、お疲れ様でした。


ゴールドラッシュ、凶暴な偽仏斉藤さんの勇姿


最後の日にやっとスキー班に加わった佐野さん、その横に写るモグラ叩きのモグラの様なのは斉藤さん大きなハーフパイップとミルカフェ前の三人衆


ウエストボールの瘤で苦しむ我々と帰りに見たうんち型の雲

スキーから帰って翌朝、鳩山首相辞任というニュースが入った。最後までKY、空気の読めない最悪の首相であった、と私は思っている。この後は管さんか?党内での順番、力から言えばこの人になるが、まさにミスター民主党の一人でもあり、あまり新鮮味がなく、鳩山さんと同じような政策で同じような結果になりそう。、政治的バランス感覚では岡田さんを一番買うが、この人は外務大臣という重職にありながら鳩山首相の影で力を発揮できなかった責任がある。穴馬が前原さんだが若く先があるから今回は無理でしょう。民主党の一番の欠点は選挙最優先の政策で迷走したことである。誰が首相になろうと、もう少し現実的な政治をして欲しい。そのためには経験、知識を持つ官僚を使いこなすのも政治家の才能である。何でもかんでも政治家がやろうとしたら国家が進むべき大計が見えなくなり、政策を誤り政治的失態を繰り返すことになる。

今度こそ、国民は奇麗事のマニュフェストではなく、実行力ある現実的な政治家を選挙で選んで欲しいと思う。 春だ春だと浮かれていると突然、冬の嵐が来ないとも限らない、そんな時守ってくれるのは誰か?いまこそ頼れる政治家が求められている。