シエラ山脈のセメント   小堺 高志   2011年5月3日

 

5月になり、震災からまもなく2ヶ月になろうとしている。相変わらず震災復興の対応の悪さが指摘され危機管理能力ゼロの民主党政権。

この国家の危機に民主党政権なのは日本の不幸であると前のエッセイで書いたが、東京都知事に4選された石原慎太郎さんが当選後の記者会見で正論を吐いている。

『民主党が掲げる「政治主導」が省庁の統制や政策決定に大幅な遅れを生んでいる、現政権は無知で未熟な素人集団であり、役人を使わない、何をうぬぼれているのか、一番ノウハウを持っている役人、専門家の知恵を使うのが政治家の力量だ』と強烈に批判をした。

 

そういう専門家に進言してもらう仕組みすら出来ていない政権なのだという。
指導力も知恵も無いのに自分で決めたがる思いつき政策。非難されれば責任転換をする御粗末な管首相。この「政治主導」という政策が変わらなければ民主党は誰が首相になっても日本の政治は変わらない。役人をコントロール出来ないから政治主導というのは本末転倒であり、その役人を使いこなすのが政権を担う者の持っていなければならない能力である。

 

石原さんは都知事という世間マスコミの注目する立場から政府に対して注文を付けてくれる得がたい存在であると思う。今回の他の候補を引き離しての当選は当然である。私がずっと思い続けていた事を言ってくれて、胸のすく思いであった。

 

さて4月29日。日本では天皇誕生日が昭和の日となりゴールデンウィークの始まりである。この週末はマンモスのフィッシングオープニング日でもあり、ここ数年オープニングデーには、スキーと魚釣りを同日にするのが慣わしになっていたが、今週末は佐野さんはオフィスの引越し、その他の人も反応が悪く、レギュラーのメンバーが集まらない。

斉藤さんは他のメンバーと前からマンモス行きを計画し、モーテルも押さえているそうなので、マンモスで会うことにし、私は以前ご一緒した羽鳥さんを誘って一緒に行くことにした。最近引っ越してきて近所に住んでいる羽鳥さんを迎えに行く。すぐ裏の公園の駐車場に面したコンドに引っ越して来ていて、直線コースにしたら200メートルくらいである。ちょうどニューヨークに戻る娘さんがいて、空港までの送迎を頼まれていた。

 

空港で娘さんを降ろし、闇夜の星空の中をマンモスに向かう。話好きの羽鳥さんと話しながら、ほぼノンストップで夜中の12時半ごろシャモニーに到着。外は風があり寒い。

 

翌朝、快晴。

すでに歩いていけるキャニオンロッジは先週末で閉まっているので、9時半にメインロッジに向かう。街中の雪はだいぶ溶けているが、スキー場はまだまだ雪がいっぱい残っている。スタンピーのリフト乗り場の近くに駐車スペースを見つけゲレンデにでる。晴れているのに気温が低く、かなり寒い。ゲレンデの雪質は当然どこも硬くセメント状態である。少し緩まないとスキーとしては面白くない。滑ると冷気で出ている顔面が痛いほどである。11時になっても一向にゲレンデは緩まない。春に一度溶けた雪が凍った典型的なシエラネバダのセメントといわれる状態である。



快晴の朝の寒気のなかリフトラインに並ぶ。   マッコイステーションの前にて、まだ驚くほどの雪が残る。

スタンピーのリフト上から斉藤さんを見かけたが、逃走された。逃げ足が速い。

ゴーールドラッシュのリフトで5番を一本滑りスタンピーに戻るとミルカフェで昼食中の斉藤容疑者を発見。身柄確保に向かう。

「斉藤健司さんですね?逮捕状が出ています。ご同行願います。」「人違いです」としらを切る斉藤容疑者。容疑はもちろんいい人ぶっているという偽証罪である。

何度か会っている山口夫妻が一緒であった。彼らはモテル6、通称、もてない人が泊まるというモテナイ6に泊まっている。

来年の日本移住計画を進めている斉藤さんは去年アメリカ国籍を取った。親戚の子供からはアメリカ人になり金髪で青い目になって帰国するものと期待されているそうである。子供の夢をかなえ、是非実行してあげて欲しいと思うのである。しかし、この斉藤さんが来シーズンでいなくなるのは寂しい。 

昼食後、しばらく一緒に滑った後、斉藤容疑者容疑否認のまま釈放。

ゲレンデは少しだけ雪が緩んで来たが下の部分だけであり、全体にまだ雪は硬い。春の雪は大概、昼近くには凍ったセメントも溶けるのだが、晴れているのに午後になっても氷点下の凍結状態なのはここマンモスでも珍しい。


ミルカフェでやっと斉藤さん一座を発見。斉藤座長と一緒にリフトに乗る。

マッコイに入ってビールを飲んで一休み。

先週末で全体の半分以上のリフトが停められて春スキーのシフトとなったマンモスは、あまりコースのチョイスもない。フェースは裏も表も未だに硬いので、標高の低いスタンピーとマンボを主に滑るしかない。モーグルスキー用に今回は柔らかいスキー板のストックリーを持ってきているが、ウエストボールに出来た見事なモーグルコースは今日はカチカチで滑れる状態ではない。



昼間からテーブルいっぱいにビールを並べてマッコイでパーティーの一団。シエラセメントを滑る。

 

3時過ぎにあがって、シャモニーにもどり少し夕食の下ごしらえをして、ジャグジーにいく。雲ひとつ無い青空を見ながらお湯に浸かりビールでリラックスのひと時。

今日の夕飯は豚肉のイタリアン風煮込み、サラダ、味噌汁、漬物、そしてワインは欠かせない。羽鳥さんは先日日本から戻ったばかり。震災後の日本の様子などを話してくれるが、東京では未だにほぼ毎日体感地震が続いていたそうだ。この大きな地震で東北を載せたプレートが50メートルも東に動いたそうだから、大きな余震が今後数年単位で続くと思われる。一層の注意が必要だ。今、一番怖いのが原発にもう一度津波が押し寄せることだという。その時には復興不可能になる恐れがあると聞いた。しかし、最初から津波の恐れのある土地に原発を作ったことが間違いであるし、狭い日本ではどこに原発を作っても人工密集地帯からそう遠くない立地場所となる。

 

民主党政権下の仕分け作業で中止、廃止された多くのダム計画、今となっては、ダムによる水力発電のほうが人に優しいのかもしれない。やがてダム計画も反原発で復活されるであろう。震災復興のためとはいい、子供手当て、高速無料化、沖縄基地問題など、結果的に民主党は選挙で公約した政策をほぼ全部実行できないことになる。民主党政権下でアメリカとの関係を悪くして、いまアメリカに大変な救済支援を受けている。鳩山政権も、管政権も首相になるべき人で無い人が過度の期待を受けて政権を取ってしまった。しかし期待に答えることなく民主党政権は偉大なる国家の足踏み状態をつくってしまった。おおいなる遠回りであったと国民はやっと気づいてきたようである。気づくのが遅いんだよ!国民はもっと政治に関心をもたなければならない。と、愚痴りながらワインが進む。

 

日曜日、昨日に続いていい天候である。

ゲレンデに出ると昨日より少しだけ暖かく、雪は朝から昨日よりは滑り易い。

何本か滑って「山頂に行ってみましょう」ということになって先に23番リフト乗り場を目指す。振り返ると羽鳥さんがいない。しばらく待ったが来ないので一人で山頂へ向かう。コニースを滑ってフェースからのコースと合流するところで斉藤さんたちを見つけた。羽鳥さんもすでに合流していて、彼は山頂にゴンドラで向かうものと想い私とはぐれてしまったのだという。山口さん夫婦、そして昨日会えなかった竹内さん夫婦を相手に斉藤さんがスキー教室を開いているので、まだ分かれて滑り続ける。昨日はよく飲んだのでガソリン満タン状態で体調よく快適に滑り続ける。

 

リフトで一緒になった人に「さっき上でシュワリツネガーに会ったよ」と聞く。彼は少し前までカリフォルニア州知事をしており、今は自由の身であり、またハリウッドスターに戻るというウワサであるが、今日は娘さんと滑っていたそうだ。その後、気をつけていたがそれらしい人は見つけられなかった。

 

もう上がろうかと思ってスタンピーのリフト乗り場付近で斉藤さんの一行を探していたらラリーが声をかけてきた。(ラリー:2009年2月のバックカントリーと2010年1月のダイヤモンドフォーエヴァーに登場)ラリーは嘉藤さんから私と斉藤さんが今週末は来ていると聞いていたそうで「健司はどこだ?」と聞く、やはり斉藤容疑者はマンモスでお尋ね者になっているようだ。



スタンピーの駐車場、まだまだたくさんの雪。 日曜になるとかなり空いている。雪は昨日よりかなり滑り易い。
 

一本ラリーと一緒にリフトに乗る。元カナダのナショナルスキーチームのコーチであった彼は今日は子供達とファミリースキーだという。少しだけ一緒に滑って、マッコイのところで分かれて、下に降りるとミルズカフェのテーブルに斉藤さんたちを見つけた。

もう私は上がるつもりだったのに、彼らの昼食が終わるのをまって、全員でフェースリフトで上がり、そこから駐車場のあるミルカフェまでノンストップランをしようと言う事になった。フェースリフトを降りたところから横に2列でならびスタートする。フェース裏側からマンボに向かう。やっぱり斉藤さんの逃げ足が速い。柔らかくなった斜面を気持ちよく滑降して斉藤さんを追いかける。

スタンピーのリフト乗り場で全員揃うのを待ち、「お疲れ様でした」。気持ちのいいランであった。



ついにスタンピーのリフト乗り場近くのミルカフェで斉藤さんの一座を発見。雪のゲレンデを見ながら優雅な昼のひと時。
 

シャモニーに戻り掃除をして、残り物で昼食を済ませ、2時にマンモスを離れる。今日も雲ひとつない青空にシェラネバダの雪山が美しい。5月になるのに、まだまだ今年は雪がいっぱいで、7月までスキーシーズンは続く。

 



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