待ち人来たる  2007年 12月 12日   小堺 高志

 

12月になり、ついに待ち望んだ雪を運ぶ嵐がやってきた。マンモスでは木曜の午後から降り始め、週末まで雪という予報である。シーズン初めは雪に恵まれず、人口雪でオープンしていたが、この嵐の知らせに、急遽マンモス行きを決める。

佐野さん、原ちゃんと6時にサンタモニカを出発したが、ホリディーシーズン前の週末で皆外出を控えているのか道路が驚くほど空いている。何時も沈滞して車が動かなくなる我々がトンネルと読んでいる405号線と210号線の合流点も沈滞なく、50マイルのスピードであっという間に通り過ぎ、嘘のような順調さでモハベに着いた。ピザを食べながら今シーズン初めて参加する原ちゃんとビールで乾杯。

 

運転を佐野さんに代わってもらい、後ろ座席で1時間ほどうたた寝。ビショップのマーケットの駐車場で菊池さんと落ち合う。メキシコとの国境の町エルセントロから一人で8時間車を運転しての参加である。予想に反し、ビショップに入っても雪の気配がない。マンモスの街に入るとやっとぱらぱらと雪が降り出し一気に白銀の世界となっていく。駐車場は1フィートくらいの雪に覆われていた。雪の結晶が見える様なふわふわの粉雪である。

ビールを飲みながら明日に備えてスキーにワックスを塗る。

夜間は雪と聞いていたが、いつまでたっても雪は降りはじめない。それでも木曜の夜に降った雪があるので土曜はいいコンディションのはずである。

  駐車上からコンドへの入り口  シェルパ原ちゃん

 

スキー場は朝から晴れている。前回と違って雪のコンディションは完璧に近い。スタンプアレーから入ってまずは一本滑る。すでに新雪は荒らされているが、久しぶりに滑るふかふかのベストコンディションの雪で、滑り出すと雪質の違いが分かる。これぞまさに待ち人来たる、待ちに待った新雪である。スタンプアレーは中級者用ゲレンデであるが、斜面の幅が40−50メートルくらいあり、マンモスでも一番整備された大きなゲレンデである。最初は左右に大きな弧を描きながらだんだんと細かいターンに変えていく。スキーの裏面で雪を感じ、その感触を楽しみながら滑る。荒れた雪面ではターンが終わるごとに自分の体重がスキーのどこに乗っているかを確かめるように滑る。左から佐野さんが追い越していく。今日は雪が良いので気合が入っているようだ。佐野さんを追う。

 

スタンプアレーのリフトのラインは長いが、まだフェースリフトが整備中で開いていないので、朝はあまりリフトのチョイスはない。

スタンプアレーだけでも、この雪なら十分に楽しいが、たまには違うコースを取って見るのもスキーの醍醐味。違うコースには常に新たな挑戦と、刺激と、面白さが待っている。スタンプから一筋違うブロ−ドウエイとの間にあるマンボのコースを降りる。気ままな気持ちの良いターンを続ける。

10時くらいになるとシーズン初日の原ちゃんは足が攣ったとかで早々に退散。7本ほど滑ると佐野さんと菊池さんも休憩。私はさらに3本を一人で滑ってから、マッコイステーションで彼らに合流する。私の滑っている間にすでに彼らは熱燗で飛ばしていた。佐野さん今日は魔法ビンで日本酒5合とビールをリュックに持って来ている。しょうがなく、しょうがなく、私も酔っ払いに仲間入り。

  
 

午後から雪が降り出した。フェースリフトがオープンしたのを見てスキーヤー、スノーボーダーが殺到する。我々もラインが短くなったところでラインに並ぶ。フェースの裏を滑りながら、私はコースを外れてウェストボールにショートカットして入る。岩がコースのところどころに隠れているが、それだけにここに入ってくるスキーヤーはまだ少ない、地形を知っている私は岩が隠れていない所を選んで滑る。吹き溜まりになった深い新雪が心地よいが、シーズン初めでまだコツが掴めていない。

少しアルコールが入っているので午後の滑りはきつい。それでもゴンドラで今季初めての山頂に行き、コニースを降りる。久しぶりのブラックダイヤモンド、最上級者用の斜面であるが、雪が良いので気持ち良い。

夕食のメイン料理はハンバーグステーキ。赤ワインをボトル半分使って本格的なデミグラスソースで煮込んだ自信作。これは山でも何度か作っているが、今回はサイドに添える野菜を買い忘れている。

食後、1年ほど前にシャモニーに出来たコンピュータールームに行ってインターネットに接続してみるが、残念ながら日本語を表示するフォントが入っていない。入れようとしてもパスワードがかかっていて日本語のニュースなどを見られない。英語のニュースを読んでいると隣にいた男が「飲むかい?」とビールをくれた。有難く頂いたけど、ここはノードリンクなんだけどね、ーいいか。

 
 

日曜の朝、昨夜も雪は降らなかったが、出がけになってぱらぱらと降り出した。

スタンプアレーの駐車場に車を止め、上に上がるとそれでも昨夜から7−8cm積もっていて、雪質は今日も最高。フェースの裏を滑り途中からウェストボールに入る。視界が悪いが雪は良い。すでに結構バンプが出来ている。コースの後半で全員の姿を確認して、私は先にリフト乗り場に移動して3人を待つが誰もこない。リフトで戻り、同じコースを通っても視界が悪くて、少し離れると服装を確認できない状態で彼らを見つけられない。ゲレンデにいないなら彼らの居所は分かる、一人でモーグルの感覚を取り戻すため、ウェストボールを滑り続ける。ここで今回の新兵器、新しいゴーグルの威力を見せてもらった。何時もならこの曇りの状態では斜面の凸凹斜面が見えなくて滑らないが、偏光レンズ入りのこのゴーグルはかなり視界が明るく、凸凹をクリアに見せてくれる。

 

フェースリフトに乗っていくと降り口でリフトは急に左に曲がり、そこですぐに降りなければならない。リフトを降りて真っ直ぐに進むと左側のフェース正面に下りるコースと右側のサドルボールに下りてゆく斜面とがある。今はまだフェース正面は開いていないので右のコースを取る。滑り出しは狭くて少し急な斜面。一番右側のラフな雪の中をショートターンで抜けると少し広くなりターンを大きなターンをとりながら右曲がりに回り込んで行くとサドルボールへと入っていく。ボールとは谷になった部分で真ん中は吹きだまりになり雪の付きが良い。サドルボールを途中まで降りると右に入って行く細いパスが見える。そこをカットして入って行くとウェストボールの途中上部に出る。ウエストボールはマンモスで一番モーグルの瘤が出来やすい所で、今日も上から見ると結構大きな瘤が出来ている。真ん中に岩が出ている箇所があるため、右のコースと左のコースがある。最初は緩い斜面で瘤も小さい、ここでリズムを掴むとかなり下までいけるが、途中から瘤が大きくなって来て、リズムに乗れないとコースから弾かれてしまう。先シーズンを思い出し、しっかりと膝を前に出し雪を踏みつけるよう心掛ける。何度か滑りこむとだんだんと良い滑りが出来るようになってくる。

 


時間を見計らってマッコイステーションに行くと全員休憩中、聞けば2本滑ってもう休憩だという。休憩は滑りつかれた時に取るものと思っていたが、原ちゃんまだ2本しか滑っていない。10分ほど休んで彼らはまだ動く気配がないので私だけフェースに戻る。ちょうど空が晴れてきて素晴らしく綺麗な雪景色を見せてくれる。細かい粉雪が太陽に照らされ、きらきらと目の前を漂う。青空をバックに樹氷が美しい。

さらに5本ウェストボールを滑り、かなりモーグルの感覚が戻ってきたが、11時半に駐車場で集合することになっている。時間はあっという間に過ぎ、スタンピーの方に向かうと途中で佐野さんを見つける。追い越しながら声をかけ、この長い斜面をショートターンで下まで一気に下りる。そのまま駐車場に滑り込み、車の横まで行くとすでに菊池さんが待っていた。佐野さんが戻り、少し遅れて原ちゃんが戻る。

今回の雪質は最高。やっと自然の雪が降り、シーズンらしくなってきた。今年はクリスマスから年末にかけ、休暇を取りマンモスに篭る予定である。そして1月25日からスイスに飛ぶ、それが今季気合の入っている理由であるが、まだまだスキーに関してレベルを落としたくないのである。

いくスイス、待ってアルプスである。