寒波襲来     2006年12月31日   小堺高志

やっと最近寒い日が何日か続いている。クリスマスの連休に入る2日前、木曜日に、マンモスに10インチの雪が降った。まだ十分ではないが、これでスキー場は一息つき、かなりコンデションは良くなったはずである。

 

前に何度か参加している菊地さんと佐野さんはすでに4時間ほど先に出発しているので私は原ちゃんと22日午後5時半過ぎ、トーレンスの家を出てマンモスに向かう。途中ガソリンを入れるためにジャンクションで車外に出るとかなり寒い。昼間の温度が高いと雪は一度融けて雪質が変ってしまうが、今季初めてのこの寒波のために昼間も氷点下だと雪は降った時の状態を保ち続けているはずである。

 

最高気温129度(セ氏 47度)というメキシコとの国境の町、エルセントロから参加した菊地さんと7ヶ月ぶりにシャモニーで会うと、彼も我々に影響を受け今流行の170センチのフォルクルの板を買ってきていた。今回が滑り初めである。今まで彼が使っていた板との25cmの長さの違いは大きく滑りを変えてくれるはずである。私も2週間前におろしたストックリで今回の雪に臨む。

 

翌朝、今週からキャニオンロッジがオープンしているので歩いてゲレンデに出られる。歩くと雪がキュッキュツと鳴く。パウダー状態の最高の雪質である。まず8番リフトに乗って一本滑ってみる。まだコースの端に行くとカバーの薄い所があるが雪質は最高、途中で皆を待つと「良いねー」と口々に今日の雪を賞賛しながら停まる。16番に乗ってローラコースを滑り、その後5番の端にバンプが出来ているのを見つけそちらに向かう。バンプとは雪面に滑られて自然に出来た凸凹の瘤斜面である。オリンピックでは人工的に造られた凸凹を滑る「モーグル競技」として広く知られるようになったが、ここ数年の私のスキーの楽しみはこのモーグルと深雪を滑ることである。どちらもかなり上級者にならないと楽しめないスキーであるが、これが面白いのである。バンプ斜面はかなり雪が積もった後か、春先にならないと本格的は瘤斜面に育たないが、この季節の初めに良いパンプが出来ているとは思っていなかったので、私としてはかなり嬉しい。

ニュースキーでこの斜面のモーグルを試してみると、ターンに入る反応が早く扱い易い。しかし今までのスキーと比べてたら前に前にと走るスキーなのでこの雪質ではスピードを抑えるのが課題である。早い切り返しでスピードを抑え、1瘤1ターンを続ける。制動をかけるコツを掴んだらかなりモーグルにも適したスキーだと思う。ストックリはスイスにある従業員わずか50人のスキーメーカであるが、スイスのナショナルチームにスキーを提供し、かなり評判の良いメーカーであるがマーケットに出る本数も少なく、あまり宣伝をしていない。私が嘉藤さんからこのメーカーの名前を知ったのもついここ3年位のものである。スピリットはその中でもオールマウンテン用のスキーである。モーグルを試せて試乗3日目でほぼすべての状態のスキーをやれたことになる。そしてその結果はかなり満足出来るものである。

 

昼、マッコイステーションで休んでいると斉藤(太)さんと沼ちゃんに会った。

例年のクリスマス期間はスキー客で一杯のはずだが、今年はずっと雪不足が言われていた所為か予約を取ることを躊躇した人が多いのであろう、思ったよりスキー客が少ない。ゲレンデは空いているし、どこの宿も満室ではないので我々には良いことである。しかも木曜日の嵐で雪不足も解消されつつあり、雪質も良く、今日はメインのコースはほとんど開いている。「今日の雪は最高ですね」という我々に「昨日はもっと良かったよ」といやな事を言う我々より一日早く入った斉藤さん。何本か滑って斉藤さんがフェースの裏側を行く途中から23番リフト乗り場の方に行こうと先導する。付いて行くと雪のカバーが悪く所々地面が薄く見えるところがある。そこを避けて何とか滑って下り、「斉藤さん、ここは雪の量が斉藤さんの髪の毛のように薄かったですよ」と文句を言うと「私の髪のように、真ん中は薄いけど両側はもっとありますから」とジョークの分かる人である。新しい短いスキーを履いた菊地さんはターンが楽になり気持よく滑れている。やはり25センチの長さの違いは今までのスキーな何だったのだと言う感じのはずである。

   
新製品、半ヘルメットを被った私     佐野さん
   

原ちゃん                      菊地さん 

スキーの後、佐野さんとロビンのスキーショップに行き佐野さんのスキーのチューンナップをたのむ。混んでいるので佐野さんが待っている間に私は近くのマーケットへ買い物に行く。戻ってくると佐野さんがロビンの店にあったストックリの一年落ちのSCに予約を入れたという。私のスキーモデル、スピリットとは違うモデルでスラローム用のスキーになるが、私のニュースキーに乗ってみて彼もストックリが気に入ってしまったようだ。

 

ジャグジーの後、夕食は寄せ鍋、斉藤さん、沼ちゃんもモーテルから参加して楽しく過ごす。斉藤さんのもっかの楽しみは“自分の家の庭にオポッサム(大型ネズミのような有袋類動物)が排泄行為に来るのを覗き見する事”という変態趣味らしい。庭にはレモン、オレンジ、アボカドの木があり、斉藤さんもたまに庭でおしっこをするらしい。これをオーガニック栽培と言うらしい。さらにどちらかが糖尿病の気が有る所為か、そこで採れるオレンジはとても甘いらしい。

 

翌日、5番リフトのフェースにバンプが出来ていて面白い。

沼ちゃんは初日に、斉藤さんに引きまわされ、かなり疲れているご様子。斉藤さんも腿が痛いと言ってるところを見るとシーズン初めでいきなりの良いコンデションに出会いオーバーワークになっているようである。そんな斉藤さんが「13、14番のリフトが開いているから、山の裏側に行こう」と言う。私は「絶対にコンデションは悪いよ」と言ったが全員で付き合う事になり、ゴンドラで山頂に行く。裏側は上の滑り出しの所は土と石が出ているが、斜面には結構先日降った雪が付いているようにも見える。斉藤さんが先頭で滑り始めたので私も続く、20センチほどの雪が付いているが、重い雪でかなり滑りにくい状態。ショートターンをしていて重い雪に足をとられて転んでしまった。誰も見ていないだろうと思って上を見れば、滑っている私と斉藤さん以外の全員がまだ滑りださずに、横並びでしっかりと見ていた。当然彼らは下りてこない。別のグルームされているコースで迂回しながら彼らは下りてりてくる。私はそのままこのコースを下りる。途中で皆と合流して「はい、私が言ったとおりでしょう。全員でここに案内した斉藤さんに文句を一言ずつ!」「今日の教訓、斉藤さんには付いて行くな!」雪は重いが大きなターンを描けば問題なく滑れるがつい難しい状態でのターンに挑戦してしまう。全員が13番のリフト乗り場に着いたが原ちゃんがいない。たまたま彼に無線を預けていたので呼び出すと「下に下りないで、今メインロッジに向かっています」とのこと、それが正解であろうが、原ちゃんは我々の仲で唯一、山岳スキー用のスキー板に乗っているのであるから、あの場面は先頭で滑り下りてほしかった。その後は私のリードで、最近お気に入りのマンボなどを気持ちよく滑る。

 

夜、再び両氏を招待して食後 リクリエーションルームでビリヤード大会。飲みながらする玉突きはめちゃくちゃで面白い。久しぶりに気持ちよく酔っ払った私も斉藤さんに負けずに盛り上げる。


    
山頂は警告のオンパレード            山頂にて

    

斉藤さんのショット                リクレーションルームで沼ちゃん、佐野さん
 

3日目、クリスマスである。朝から昨日までの寒さが緩み、屋根からは雪が融けて水滴が垂れている。菊池さんが朝帰り、斉藤さん、沼ちゃんは今日の午後に帰る。雪質が変わって来ており、かなり硬い雪面になっているが今日は伏兵沼ちゃんが元気だ。しばらく滑った後、斉藤さんが「今回まだ、コーニスを滑っていないので帰る前にコーニスを滑りたい」とのことで、いやいやながら23番で山頂に行く。コニースの上に出ると前回よりコース上部は荒れていてかなり石が転がっている。新しいスキーを傷つけたくないので斜面を横に歩くようにして雪のカバーの良いところまで下りてから滑り出す。このコンデション、また斉藤さんに騙されたようである。昨日の教訓「斉藤さんには付いていかない」が生かされていない。

今日の沼ちゃんは他の人が休んでいる時も私が滑ろうと言うと付いてくる。「私のリードは斉藤さんより、うんと優しいでしょう?」「はい!」何でも最近斉藤さんは我々にこっそりとモーグルの練習をしているらしい。斉藤さんは重心が低い上に、足の幅が普通の人より親指一本分くらい広いので三角錐のような安定感あるスキーをする。その代わりスキー靴を探すのはかなり大変だと思う。その彼らは午後2時半ごろロスに戻るため分かれる。また4日後の29日にマンモスに戻り元旦まで滞在の予定だと言う。

 

佐野さんはこれから年明けまで車なしでマンモスに留まるので、彼が餓死しないように大量のカレーを作って夕食にする。残りはタッパウエアにいれ、冷蔵庫へ。

 

26日は昼まで滑って帰るつもりであったが、朝からめちゃくちゃ強い風が吹いている。今日から吹雪になる予報で、向かいの屋根の上に見える大木が大きく揺れている。しばらく様子を見るが風が弱まる気配がない。雪も少し降ってきたので滑るのを諦めてキャニオンロッジのロッカーに入れたままのスキーを取りに行く。時間は8時半を回っているのにまだリフトは風のために動いていない。

これでクリスマスの休暇は終わり、私は1月の後半までマンモスに戻る予定はない。しかし年末には私以外のほとんどのメンバーが29日からマンモスに集合して新年を迎える。世帯持ちの私はそうはいかないのであるが、正直なところ滑りたいし、私がいないとなにを言われるか分からない事も気になるところである。

スキーヤーは新雪の知らせを聞くと居てもたっても居られない。そこである計画を練っている。乞うご期待。