春の ひと時      2006年5月19日    小堺 高志

 

春の一日、今日もマンモスは朝から晴天である。

5月になり、キャニオンロッジが閉まったため、車でメインロッジに向かう。今回も灼熱の地、エル セントロから菊地さんが8時間の運転で参加している。ロスから来てもここが同じカリフォルニアとは思えないマンモス、砂漠のようなエル セントロから着たら別の国、別世界である。南北に長いカリフォルニアには気候的にも風景的にもあらゆる場所が存在している。昨日の37度の地から同じカルフォルニアでも今日は雪の上、その多様性は永く暮らしていても驚くほどである。

朝8時半、スタンピーアレーのリフト乗り場にはまだ短い列があるだけで、直ぐにリフトに乗れた。リフトの上から滑るスキーヤーの滑るエッジの音を聞けば雪の状態がわかる。今の季節は朝のうちは堅くアイシーなコンデションで午後になると柔らかく、べとべとの重い雪になる。滑り易いのは10時から12時までの2時間だけである。全面オープンのときと比べれば滑られる範囲は限られるがそれでも十分に楽しめる。春スキーの醍醐味は固めのシャーベット状になった雪をシャリシャリとエッジが削る音と、スピードを抑えたモーグルである。そしてそれは毎日わずか2時間のベストの時間帯に限られるのである。

前回久しぶりのスキーで疲れきっていた菊地さんが今回はやる気満々で先頭を行く。しかし息が上がっているので何時まで続くかが問題である。

  

スタイイピーを見る佐野さん                     再難度の一つクライマックスを上から見る

午後2時に上がって一度 シャモニーのコンドに戻り、前回と同じツイン レークに向かう。10分ほどで雪に囲まれた湖に着くと前回よりかなり雪も消えているが、まだまだ雪の量は多い。車を降りて雪の上を歩き出す。釣り人が何人か、まだ半分雪に覆われている湖に糸を垂れているのを右手に見ながら奥へと進む。目的は佐野さんの背負うリュックの中に入ったギネスのビールを大自然のなかで如何に美味しく頂くかである。松林の中の柔らかく解けた雪が足をすくう。歩きにくいがハーフマイルほど進むとローアーレークとアッパーレークの間に架かる木造の橋に着く。そこから奥にあるアッパーレークを望むと、対岸にもう一つ上方にあるレークメリーからの雪解け水が大きな滝となってアッパーレークに流れこんでいるのが見える。この橋の上を第一候補として、橋の先のキャンプ地を見てみるが、キャンプ場のテーブルはまだ雪の中。座るに良さそうな物がある、と近づくとそれは雪の中から頭を出したトイレの建物のようである。トイレの屋根に座って飲むビールが美味いとは思えず、第一候補の橋の上に戻る。この橋の上からの眺めがやはり絶景である。3人で座り、リュックからビールとつまみを出してカンパイ、ギネスの黒ビールが美味い。目の前の雪の上にビールを置くと天然の冷蔵庫である。途中でスノーモービルが2台来たので通り道を開けてあげようとビールを持って立ち上がろうとすると、「そのままで良いよ」という合図、目の前を行くスノーモービルのドライバーが 「良いことやってるな!」と会釈をして通っていく。

頬をなぜるすっかり暖かくなった春の風が気持ちよい。ビールが美味いと会話も弾む。楽しくも心地の良い春のひと時を自然の中で過ごし、ほろ酔い気分でまた歩き難い雪道を戻る。

  

ビールが美味い、このためにこの場所に来た我々

 

勝負にでるのには早すぎた前日を反省して翌朝はゆっくりと出発、メインロッジに行ってて朝食を食べ、滑り始めたのは9時半頃、滑走時間が短いので、ベストの時間帯の2時間の滑りを大いに楽しまなければもったいない。今日もこの時間帯になるとモーグルーが瘤斜面であるウエストボールに集まってくる。今の季節は巧い人が多い。競技モーグルの滑りで真っ直ぐのラインで斜面を攻めるスキーヤーは上級者のモーグラーである。下半身を柔らかく使ったオリンッピックなどで見るあの滑りであるが、あの滑りが出来る人は少ない。そして確実に皆の視線を受ける。佐野さんと菊地さんがマッコイの外の椅子に坐ってみているとき私だけ一本モーグルを滑りに行くが、こんな時に限って直ぐ前に巧い滑りをする人が先に下りてしまう。いいもんね、どうせおいらは若くない、安全に下りたら儲けもの。とすねながらも実際は「クソー!」と燃える、まだまだ気持ちは若い私であった。

 

マンモスの季節は確実に魚釣り、山歩きの季節に移行しているが、今年は大雪のためスキーシーズンは7月まで続くそうである。自然の恵みに感謝感謝の春スキーヤー達である。