どか雪    小堺 高志    2010年3月1日

 

マンモスは今週もすでに60cmの新雪が降って、今週末も雪の予報である。やはり新雪の便りを聞くと心が躍る。

前夜ウエストハリウッドのハウス オブ ブルースで70年代後半に活躍したチープトリックのコンサートを観に行って真夜中遅くに帰ってきた。それからさらにオリンピックの女子フィギュアスケート浅田真央ちゃんとキムヨナの対決を観てから寝たので少し寝不足である。二人の対決は点数が開いたのは残念であったが、男子のフィギュアでも話題になったように、難易度の高い技はもっと評価されて良いと思う。


ステージまで2m、最近のアメリカのコンサートは携帯にカメラ機能があるので、フラッシュを焚かなければ、ほぼ撮り放題である。

 

さてさて、寝不足ではあるが2月26日金曜日にマンモスに向かう。今回は腰痛で昨年一度しか参加できなかった原ちゃんが参加すると言う。エルセントロからは菊池さんが来るので久しぶりのオールキャストである。

 

道路の混雑を避けて、7時過ぎにサンタモニカに集合して3人で食事をする。生ビールのピッチャーにつまみまで頼むから危うく宴会モードになりそう。でもビールはピッチャー一杯にして前半はあまり飲んでいない佐野さんに運転してもらい、私は2時間ほど後ろ座席でぐっすりと寝てすっきりする。

途中、先を行く菊地さんと連絡を取ると、ビショップから17マイル先で雪が降り出しチェーンコントロールをしていると言う。菊池さんの4輪駆動でもチェーンを持たないと先に行かせてくれないのでビショップまでチェーンを買いに戻るところだそうだ。出だしの交通状態は良かったが、今夜はかなりの降雪を覚悟し、長い夜になりそうだ。

 

ビショップを過ぎると車の流れが止まった。道路で警官が車を停めて一台一台チェーンを持っているか確認し、その場でチェーンを履かないと先に行かせないため、長い渋滞になっている。30分ほどして検問に辿り付き、路肩でチェーンを履く。半分みぞれの中での作業はきつい。

そこから先は激しい雪である。


食事して出発、ビショップの先から渋滞、雨から雪に変わり、チェーンをして雪の中を走る

 

定宿シャモニーのコンドに着くと駐車場には雪に埋まった車がいっぱいで、ほとんど車を停めるスペースがない。車から降りると膝まで埋まる雪である。駐車スペースを探す。一角に何とか停まれる一台分のスペースを見つけたが、そこまで行くには雪が車の腹を擦っている。スコップで雪かきをしていくぶん雪を散らしておいて、ここに突っ込むしかない。「ちょっと無理でしょう」と他の二人が心配するが、雪国育ちを舐めてはいけない。下がってスピードをつけて、雪の中に突っ込み、ピッタリと予定したスペースに車を停車する。

日本の雪国には「どか雪」という言葉がある。ドカーンと一晩で大量な雪が降ることである。一晩で膝までの降雪はマンモスでも久しぶりの「どか雪」である。(後で調べたらこの一晩で70cm積もっていた)

 

部屋に入って待っていた菊地さんを交えて乾杯。すでに夜中の3時である。その後 酔っ払いの佐野さんと原ちゃんが寝てくれないので、朝5時過ぎまで眠れなかった。まったくどうしてくれるんだよ。翌朝説教だよ。



コンドの駐車場に見事に並ぶ車の雪だるま、でも雪を掻き分け見事に駐車

 

朝8時に起きる。寝不足だが、今日は一日中雪という予報もはずれ朝から雲ってはいるが降ってはいない。昼頃にキャニオンロッジ来ると言う原ちゃんを残して10時近くに歩いてゲレンデに向かう。新雪ではあるが、べたべたした湿っぽい、重い雪である。

 

ゲレンデに出ると目の前には長いリフトライン。我々くらいのものかと思ったら、この雪の中よくもまあこんなに大勢のスキーヤー、スノーボーダーが苦労をものともせず滑りに来るもんだと思う。混んでいるキャニオンエススプレスを避けて8番リフトからはいることにする。リフトの上から見ると昨夜夜半から積もった雪で、何処もかしこもグルームしていない荒れたコンデションである。すぐに22番リフトに向かって滑り降りるが、今日は8番リフトをおりて何時もと反対の右側の斜面を22番乗り場に向け滑り降りる。こちらの方がまだ荒らされていなくて深雪が残っているように見える。しかし、実際に滑ると湿った深い雪で足を踏ん張らないとターンが出来ない。かなり足に負担のかかる雪質である

 

5番リフトに乗って、そこからマッコイステーションに向かいトラバスするが、スキーが進まない。ストックを突いても雪に埋まるのでスピードが落ちると漕ぐのが大変である。今日のコンデションは先日行ったブライアンヘッドのサラサラ雪とは大違いである。すでに踏み荒らされている上に曇っていて明暗が無く凸凹が見えないので余計に雪にスキーを取られる。まったく見えない吹き溜まりに突っ込んで転んでしまった。雪が降ってきた。風がないのでまだいいが、マッコイステーションで早くも休憩である。

 

マッコイの前で深い雪にはまった佐野さんがなかなか抜け出せないで苦労している。体力を使い切った佐野さんがやっと合流し、雪に文句を言っている。まーまー、とまずは一杯。ひれ酒とビールである。スキーが駄目でも、我々にはこの楽しみもある。でも佐野さんは先ほどの奮闘と明け方の反動か、気分が悪そう。大概の酒とビールは私と菊地さんで消化する。

 

気分よく、それなりに場が盛り上がり、12時を遥かに回った頃「そういえば原ちゃんとキャニオンロッジで昼に会おうと言っていたね」と思い出すが、「どうせ来てないよ」というのが大方の意見である。まー良いか。上が開いていれば雪質もいいのであろうが、標高の低いところはべたべた雪で荒れた凸凹の振動が足に強烈に伝わる。このコンデションに、もうキャニオンロッジに向かおうということになった。



22番リフトのライン、深い雪の中を降りてくるスキーヤ。 5番を行く佐野さん


雪の中で暴れる道産子菊地さん、マッコイで休憩をおえ、ほろ酔いで良い気分になった我々、原ちゃんを忘れてた。
 

佐野さんが一番楽なコースをと、リクエストするので大回りで8番リフトの降り場の方にでる。そこからさらに楽なコースを行こうとしたら佐野さんがレッドウイングを降りる気のようなので私も進路変更する。佐野さん気を引き締めて滑る、続いて菊地さん。二人が下まで下りたのを見届けて私が滑る。良い感じである。菊池さんが林の中に入りたそうな様子をしているので、「8番の真下を滑ってみる?」と、そこから私が先導して林の中にカットインしていく。8番の真下はリフトの上から丸見えで、リフトを待つ列の横に下りていく。無様な滑りは出来ない。私が先に滑る。雪は悪いが身体が遅れないように上手くこなし、下で二人を待つ。降りてきた二人とキャニオンロッジに入って原ちゃんを探す。

原ちゃんが見つからないので、「やっぱり、来なかったんでしょう」と、持参のお酒を飲み尽くしたのでバーでビールを買ってお疲れさんの乾杯。

 

シャモニーに戻ると原ちゃんが待っていた。何と、ちゃんと滑りに行って2本滑ってきたという。

そういえば今回から部屋に新しい液晶テレビが入れてある。先日ブライアンヘッドに向かっていたために観られなかったオリンピックの入場式を録画してきていたのでみる。そのオリンピックも明日で閉会式である。テレビを観ながら夕飯の牡蠣鍋の用意をする。

 

ジャグジーに行ってリラックスした後、窓辺に積もって外が見えなくなった雪の始末をした後、ワインをあけて食事である。DVDを観るが私はすぐにうたた寝してしまった。



レッドウイングを降りようという佐野さん、私も慌てて戻る。8番リフトの真下を降りてくる佐野さんと菊地さん、皆が見ているよ。

ロッカールームで靴を履き替える佐野さん、バーで生ビールを買う
 

日曜日、雲っているが予報ではまもなく晴れそうである。

今日は午前中だけ滑って帰るので目標は裏側の13番まで行って戻ってくることである。一晩冷やされ、昨日より雪のコンデションは良い。今日はかなりの部分がグルームされているので滑りやすい。5番のグルーム斜面をすべり、途中からグルームされていない斜面に入ってみると、昨日より雪が軽く感じる。なるべく斜面の凸凹に抵抗しないように足を柔らかく使って滑る。

昨日と打って変わり、今日はスキーヤーが少なくリフトラインの長さも昨日の4分の1、ゲレンデはがらがらである。青空が出てきた。

「今日はコンデション昨日より良いね」と満足の我々。

さらに今まで動いていなかったリフトが動き出しているので、新雪をもとめて移動してみる。

12番で上がり裏の13番におりる。途中から林にはいりまだ少し新雪の残る14番リフトの真下にでる。後ろに菊池さんが付いて来ている。林の中は良い雪が残っている。ここからは前回ラリー、嘉藤さんと滑ったホムロックの山全体が良く見える。新雪の上を数人のスキーヤー、スノーボーダーが滑った跡がある。この深い雪の中をリフトのない山をあそこまで登るのは相当に大変であろう。スキーヤーは良い雪のためならば苦労をいとわない。


遠方から薄日が射してきた。アッパークリークの谷


深雪を滑る菊池さん、12番リフト上からの風景、今日の雪は良い。青空に雪景色が美しい


ホムロックの全景、右上の尾根付近が前回滑ったダイヤモンドフォーエバーと呼ばれる場所
 

13番で上がって、ここからキャニオンロッジへ戻ることになる。今日はいつもと違うアッパークリークを滑って戻ろうというのでフェースの裏側からアッパークリークの谷へ降りていく。右側の山頂がオープンしてスキーヤーが次々と降りてくる。しかし我々はもう帰る時間なので先を急ぐ。

アッパークリークは全体が谷になっている狭い谷底を下りて行くコースである。佐野さん、菊池さんが谷に入っていく。佐野さん今期は足の具合も良く調子良い、佐野さんが元気に滑るのを見るのは嬉しい。あとは原ちゃんであるが、痛み止めを常用しているからまだ時間がかかりそうである。私は二人の滑った方には行かず、深雪を求めて、谷を見下ろす位置の右側の斜面にトラバスしていく。思ったとおりふわふわの雪が付いている急斜面の上に出る。そこから深雪の中を滑って谷底へと滑り降りて二人を追う。この深さの新雪を滑るのは雪にスキーを浮かせてフワリフワリと雲に乗る感じである。

キャニオンロッジへ向かう最後の斜面は私の好きな瘤斜面アクトを下りることにする。アクトには今日は良い瘤ができている。まだ疲れていないので、一気に攻撃的に滑ってみる。かなり思ったとおりの滑りが出来、気分良く滑り終えることができた。上を見ると二人が来ない。8番の方のコースを取っているようだ。そのまま滑って、レッドウイングの下に先回りして二人が下りてくるのを待つ。途中で合流し、キャニオンロッジに下りるが、少し予定よりも時間が早い「もう一本、8番行って見る?」と誘ってみると、菊地さんだけ付き合ってくれると言う。先ほど私の滑らなかった8番下のレッドウイングの斜面に向かう。ここの瘤斜面はアクトの斜面より幾分なだらかで易しい。雪も柔らかいので斜面お上で止まらずに瘤斜面に入っていく。程よい大きさの瘤を舐めながらは直線的にスピードに乗って瘤をのり超えていく。この斜面なら、自分ではかなりモーグルらしい滑りになってきたと思う。モーグルの季節である春先が待ち遠しい。

ここで皆さんに言っておきたいが、写真で見る斜面の勾配より実際の上から見た勾配は
倍くらい急である。何時も写真にすると物足りなさと迫力の無さを感じている。



14番リフトと13番リフト上の佐野さんと菊池さん。


アッパードライクリークを下りていく佐野さん、私はさらに先に進んでから谷に滑り下りた。   アクトの斜面

我々が帰る頃になって山頂が開いた
 

シャモニーに戻ると原ちゃんがすでに大方の後片付けをしていてくれた。昨夜の残りで昼食を摂り、私は車のチェーンを外す。

今回はどか雪で、降雪の中を久しぶりにチェーンをつけて1時間半遅れでマンモスにたどり着き、一日目は山の下の半分しか開いておらず、雪は重くどうなることかと思った。2日目の気持ち良い滑りが全の苦労に報いてくれた気がする。この気分を味わいたいがために、苦労して遠く雪山まで通うのである。

 

帰り道、395号線から見える真っ白な雪山の風景が素晴らしく美しい。


やっと除雪されたシャモニーの駐車場395号線から見る雪山